米軍アフガン増派、「勝利なき戦争」という大誤解
アフガニスタンの場合、タリバンが大都市制圧をもくろむ軍隊へと変貌を遂げ、戦場で倒すことのできる標的になれば、アメリカが支援する政府軍に敗れる可能性が高い。だがタリバンの指導者たちはかつてのムジャヒディン(アメリカの訓練を受けた反政府ゲリラ)と同じ過ちは犯すまい。ムジャヒディンは親ソ政権打倒を目指してゲリラ戦術を捨てて戦争に走り、1989年にソ連が支援する政府軍に大敗した。
アフガニスタンでアメリカが決定的勝利を収めることは不可能だが、それはタリバンも同じだ。彼らは米軍が駐留している限り、戦争はできない。
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米軍が長期駐留する役割の1つは、勝てないことをタリバンに自覚させて交渉による合意を促すことだ。合意は大筋でアフガニスタン国家の地方分権化を進め、パシュトゥン人が多数を占める南東部の自治権を拡大するものになるだろう。
だがアフガン駐留米軍の役割はもう1つある。アフガニスタン政府に改革の圧力をかけることだ。政府はタリバンよりはましというだけで、自主的な改革は期待できそうにない。その点、米軍が部隊の規模を小さくして戦闘はアフガニスタン軍に任せるのは正解だ。
新戦略は撤退時期には言及せず、決定的勝利を約束するのを避けている。戦略としては地味だが、それでいい。
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[2017年9月12日号掲載]