仮想通貨バブルを各国中央銀行は警戒せよ
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誕生から9年でビットコインは既に金融システムの一部に Bodnarchuk/ISTOCKPHOTO
<実体がなく価値を管理することもできない――拡大し続ける仮想通貨とその危険性>
少なくとも8月末に米テキサス州ヒューストンが大洪水に見舞われるまで、各国の金融市場は堅調にみえた。先進諸国では株価指数が最高値を更新していたし、新興経済圏の市場も力強い動きを示していた。しかし現在の水準は市場のファンダメンタルズに基づいておらず、持続不能で、非常にリスクが高い。
著名ファンドマネジャーのモハメド・エラリアンが指摘するように、今の経済成長モデルは「金融機関のみならず中央銀行の供給する流動性やレバレッジに依存し過ぎ」ている。
しかも、このゆがんだシステムを一段と不安定化させかねない要素がある。いわゆる「仮想通貨」の急速な台頭だ。ちなみにIMFはデジタル通貨を「デジタル化が可能な法定通貨」、バーチャル通貨を「非法定通貨」と定義しており、ビットコインに代表される仮想通貨は後者に分類される。
ビットコインの誕生から9年。その法的な地位はともかく、国家の権威に頼らない電子通貨の普及が金融市場を揺さぶっているのは間違いない。この8月15日に1ビットコイン=4483ドルとなった時点で、発行済みビットコインの時価総額は745億ドルと、年初時点の5倍以上に膨れ上がった。それをバブルと呼ぶかどうかは別として、各国の金融規制当局が無視できない規模であることは確かだ。
【参考記事】それでもビットコインは「カネ」になれない
ねずみ講に似た仕組み
ビットコインと、その基盤技術であるブロックチェーンの登場を、各国は当初、興味深く見守っていた。もともと国家の関与しない仕組みだから手を出しにくいという事情もあった。
だが仮想通貨は違法な取引に利用される恐れがあった。実際、「シルクロード」といった違法ドラッグなどの闇サイトはビットコインを使用していた。さらに14年にはビットコイン取引所マウントゴックスが経営破綻し、一部の国は規制に乗り出した。
仮想通貨のリスクはほかにもある。法定通貨も仮想通貨も、金貨などと違いモノとしての価値はない。しかし法定通貨には、その価値の維持に責任を持つ中央銀行がある。対して仮想通貨の価値を決めるのは、それを価値あるものと見なして取引する人々の意思だけだ。そういう人が多ければ多いほど価値は上がる。ある意味、ねずみ講に似た仕組みと言える。