ちょっと待った、そのスシは本物?
スズキの8割は偽装魚?
世界の港で水揚げされる水産物の大部分は、無数の個人漁業者からもたらされる。それが冷蔵トラックに積まれ、市場、加工工場、量販店などへ運ばれる過程で、誰がどこで釣った魚かといった情報は失われてしまいがちだ。最悪の場合、意図的に変えられてしまうこともある。
オセアナがイタリアで行った調査では、スーパーマーケットやレストランで提供されているスズキ、ハタ、メカジキの82%が偽装表示だった。最もよく使われていたのは安い白身魚のアジアナマズで、スズキやハタなど18種類の魚に偽装されていた。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)などが12~15年にロサンゼルスのスシ料理店26軒を調べたときは、半数近くがメニューの表示とは異なる魚を提供していた。
こうした状況を米政府も放置しているわけではない。米商務省は14年、「違法・無報告・無規制漁業および水産物偽装撲滅対策本部」を設置。18年1月にも、輸入水産物のトレーサビリティの新規則の導入を目指す。
この新規則では、魚種名はもとより漁獲者情報(漁具や養殖施設を含む)、漁獲日、加工業者、流通業者などの記録保持が求められる。対象となる魚種は限定的だが、「何もないよりましだ」と、オセアナのベス・ローウェルは言う。
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だが、大きな負担を強いられることになる水産業者の間では、規則導入に反対する声もある。全米漁業研究所の広報担当ガビン・ギボンズは、現行の規則で偽装水産物を取り締まることは十分可能だと言う。問題は規則が十分執行されていないことだ。
それでも16年、カリフォルニア州サンタクララ郡では、養殖チカダイをペトラーレカレイとして提供したレストランに12万ドルの罰金が科された。15年には同州サンディエゴ市で、8軒のスシ料理店が偽装表示の魚を提供したとして罰金を科された。
消費者の目(と舌)も肥えてきたようだ。バンブー・スシがポートランドに1号店を出した08年、客の数は年間3万人程度だった。それが16年には36万人まで増えた。魚の原産地について質問する客は減ったが、それは店への信頼が高まったからではないかとロフグレンは言う。
持続可能な漁業への関心も高まっている。非営利の国際団体、海洋管理協議会から「持続可能な水産物」の認証を得た水産物は14年より6%増えた。認証を申請する業者も約16%増えた。
「大事なことだ」と、コバヤシは太平洋産メバチマグロを指差して言った。「子供たちの世代もマグロを食べられるようであってほしいからね」
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[2017年8月29日号掲載]