教訓は生かされたか? カトリーナ取材記者が見たハービー被災地
ハービーの破壊的猛威が世界中に報道されるなか、当然カトリーナとの比較も行われている。
だが私は、バーバーさんほど的確に表現することはできない。「至るところに死んだ赤ちゃんや遺体がない以外は、カトリーナと同じ」と、彼女は語った。
米連邦緊急事態管理局(FEMA)によると、カトリーナの犠牲者数は1833人に上る。
ハービーの最終的な犠牲者数はまだ不明だが、現段階の推定では30人程度とされている。
人災
犠牲者数の落差は、この2つのハリケーンとそれぞれの危機管理当局者の対応に見られる大きな違いを浮き彫りにしている。
カトリーナにおいて、完全に理解する人が少なく忘れ去られているのは、米陸軍工兵部隊(COE)が建設した堤防システムの致命的欠陥が壊滅的被害の原因だということだ。
主要な3本の水路は設計仕様書にある水位に達していなかった。水は堤防を越えて流れ込んだのではない。十分な深さで建設されなかった堤防の下部部分の土砂が洗い流されてしまったのだ。
こうした重大な欠陥により、わずか数分で水位は上昇し、家屋を破壊して住民を溺死させる威力を持つに至った。脱出できた住民のなかには、極度の疲労や病気でのちに亡くなる人もいた。
堤防の欠陥がカトリーナによる被害の原因になると予想していた人は誰もいなかった。
一方、テキサス州の当局や非営利団体は、ハービーの脅威をはっきりと認識し、12年前のカトリーナの教訓を生かしていた。
ヒューストンが豪雨に見舞われる前、ハービーによる暴風は沿岸部にあるテキサス州ロックポートという小さな町を直撃。多くの建物が破壊されたものの、比較的小規模な洪水で済んだ。
ヒューストンでは暴風による被害はそれほどでもなかったが、歴史的な降水量を記録した。だが、ハービーが直撃する何日も前から、気象学者たちはそのことを予測し、救急当局や警察が前もって捜索や救助、避難所などの準備をすることを可能にした。
電線が切れるなど暴風による被害がなかったおかげで、電光が洪水の水を不気味に照らし出していた。28日夜、軍の救助車両に乗っていた私は、浸水した家でテレビを見ている人を目撃した。