教訓は生かされたか? カトリーナ取材記者が見たハービー被災地
小さな濡れネズミ
ニューオーリンズ第9地区に隣接したセントバーナード郡の紛れもないアクセントで話すバーバーさんに、私はどれだけ安堵(あんど)を覚えたか、言い表すことができない。
高潮がヒューストン南東部にあるバーバーさんのアパートに迫るなか、彼女はカトリーナがルイジアナ州沿岸を直撃しようとするなかで自身に起きた発作を思い出したという。ハリケーンでパニックになるといったような感情の高ぶりが、てんかん発作を引き起こしかねないことを彼女は学んでいた。
それ故、バーバーさんはハービーがテキサス州に接近したとき、大海原や虹など楽しいことだけを考えて、発作が起きるのを防ごうとした。そして、それは功を奏した。
バーバーさんは間もなくして膝まで水に浸かり、隣人宅の2階で救助されるのを待った。
「私は行き場のない小さな濡れネズミだった」と、バーバーさんは私に語った。
バーバーさんが死に直面したのはこれが初めてではない。彼女はかつて麻薬の売人で、銃を携帯していた。21歳のときに車で正面衝突する事故に遭い、カトリーナが直撃する少し前までの4年間、介護施設で過ごした。
「神様はきっと私を愛しているに違いない」と、バーバーさんは避難所のベッドに座り、こう話した。「麻薬を売るのも切り抜けた。カトリーナも切り抜けた。そして今度はハービーも。生かされる意味があるはず」
対照的な2つのコンベンションセンター
ヒューストンのジョージ・R・ブラウン・コンベンションセンターでの光景は、私の心に焼き付いているニューオーリンズのアーネスト・N・モリアル・コンベンションセンターでの悪夢ような光景とはまさに対照的である。
ロックポートの学校では先週末、避難所が大いに改善されているのを目にした。ここでは、脚本家志望の29歳の男性が、電気も水道も食料もない施設の管理を引き受けていた。
ヒューストン中心部では29日、当初5000人の収容が予定されていた避難所に1万人近くが避難。電気も、エアコンも、トイレも、十分な食事や水や薬もあり、大勢のボランティアが常に気を配っている。