世界が抱えるもう1つの核危機
欧州寄りの米政府関係者や、イランの核合意順守状況の監視役であるIAEA(国際原子力機関)も、イランはきっちりと合意を順守していると言っているのに、報道によれば、トランプはどこからかイランは合意を順守していないと結論づけたという。
トランプは昨年の米大統領選挙の最中から、オバマ前政権下で結ばれた核合意を悪しざまに言ってきた。同合意はイランの弾道ミサイル開発を禁じておらず、ウラン濃縮活動などの制限にも最大25年の期限があって、それ以降核開発が再開されかねないことなどを問題視している。
国連総会での初演説でも、イランを「暴力、殺戮、混沌を主な輸出品とする困窮したならず者国家」と呼んだ。核合意のことは「アメリカがこれまで合意したなかで最も一方的で最悪の取引」と呼び、破棄する可能性を匂わせた。
イラン国民へ謝罪を
イランに対するトランプの強硬姿勢を支持しているのは、イスラエルとペルシャ湾岸の首長国家だ。核合意で経済制裁が解除されたイランは、数十億ドルに上る増収分をイラクやレバノン、パレスチナ、シリアなどの武装グループ支援に回し、地域での影響力を拡大しているというのだ。
ロウハニは、再交渉は「現実的ではない」と言った。何年にも及ぶ国家間の厳しい交渉の末、ようやく国連安保理の支持を得て成立した合意なのだ。
「今後期待するのは」と、ロウハニは言った。「トランプ氏からイラン国民に対する謝罪だ」
だがトランプは、また正反対のことをするかもしれない。