最新記事

いとうせいこう『国境なき医師団』を見に行く(ウガンダ編)

南スーダンの「WAR」──歩いて国境を越えた女性は小さな声で語った

2017年8月7日(月)18時00分
いとうせいこう

小さなテーブルがひとつの診療室なのだ(スマホ撮影)

<「国境なき医師団」(MSF)を取材する いとうせいこうさんは、ハイチ、ギリシャ、マニラで現場の声を聞き、今度はウガンダを訪れた>

これまでの記事:「いとうせいこう、『国境なき医師団』を見に行く
前回の記事:「家族でなかった者たちが作る家族──ウガンダの難民キャンプにて

入院病棟をさらに

ビッキー・ジョジョたちに別れを告げて、俺たちはさらに入院病棟を見て回った。

14歳以下の児童に割り当てられた部屋には10床ほどベッドがあり、その幾つかに母親と子供がいた。中には床に敷いたゴザに座っている親子もいて、そちらの方が落ち着くのだろうと思われた。

喘息、栄養失調、感染症などなど、子供たちを襲うものは多々あった。しかも難民だけでなく、そこにはビディビディ居住区の近隣住民の子供たちも収容されているとのことだった。

患者たちには1日3食、『国境なき医師団(MSF)』から食事が提供されていた。他にも栄養失調への救援に特化されたACF(英語ではAction Against Hunger)という団体からの助けもあり、その入院病棟ではお互いが手を組んでいるらしかった。

ito0807b.jpg

合理的に作られた施設。

もしその病棟でも助けられないという事態になれば、途中で俺たちも寄ったアルアという町に搬送され、さらに複雑な外科治療となれば首都へも送るのだという。ちなみにそうした際、MSFから紹介された患者の費用は全額MSFが持つことになる。

さて児童たちの病室の向かいに行くと、そこは緊急治療室だった。すでに6人ほどのスタッフが詰めていて、狭い中に4つのベッドがあった。ナースステーションのかわりにもなっている場所ゆえに、患者情報もすべて部屋の中にあった。もしも救急患者が来ればそこで安定化をはかり、適切な診療室や病棟へと送る役割を持っている。

続いて男性のための入院施設、薬品管理室、心理ケアのための個室、血液検査室、そこを抜けて奥へ行くとランドリー室があり、男女1人ずつに1枚配られる毛布と蚊帳が積まれていた。

かなり大掛かりな(作りは簡素だけれど)入院病棟だと思われたが、まだまだ手狭で、昨年緊急に設置した施設はだいぶ傷んできていると判断されたらしく、新しく4棟が建設されていてまさに突貫工事中という感じだった。

「もしこれが出来れば」

と案内してくれていた男性スタッフは、とても細かく新施設の割り振りを俺に力説した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中