中国の腐敗はどこまでいくのか? 腐敗を取り締る中紀委の財政部トップが取り調べを受ける
第18回党大会以降の腐敗問題逮捕者数
中国共産党機関紙の人民日報の電子版「人民網」は第18回党大会における習近平政権誕生から2017年1月9日までの中央紀律検査委員会による逮捕者数を報道している。それによれば、全国の紀律検査委員会で立件され(裁判にかけられた)件数は116.2万件で、党籍剥奪や公職追放などの党規約による紀律処分(行政処分)を受けた人数は119.9万人であるという。そのうち、中共中央の組織部から任命された中央行政省庁や省レベルなどの高級幹部(中管幹部)(大臣や省・直轄市の党書記クラスなど)で、立件されて審査を受けた(裁判を経て実刑などを与えられた)者の人数は240人で、紀律検査処分を受けた者の数は223人であるとのこと。
その後のデータでは、2017年前半だけで20万人が取り調べを受け立件されたというから、腐敗は尽きることなく湧き出していることになる。
これらは「虎狩り(国家、省レベルの高級幹部)」、「ハエ叩き(中級幹部、党員)」、「蟻探し(村レベルの下級幹部、党員)」だが、さらに「キツネ狩り(海外に逃亡した者)」が2014年から始まり、アメリカの協力などを得て2566人を探し出して捕まえている。
反腐敗運動は権力闘争ではない
これを以て権力闘争と分析したのでは、中国の真の姿を分析することはできない。
100万あるいは200万人もの幹部を「政敵を蹴落とすために腐敗を名目として逮捕する」などということができるだろうか。そのようなことに専念していたら、政権は運営できなくなってしまうだろう。いま習近平政権は、一党支配体制を維持するために、習近平とトランプのどちらが世界を制するかに専念している。国内の権力闘争に明け暮れているのではない。権力闘争だと煽って、日本国民を喜ばせ安心させるのは、日本の国益を損ねる。
反腐敗運動は、政権が盤石だからこそ実行できるのである。胡錦濤政権の時はチャイナ・ナイン(中共中央政治局常務委員会委員9人)のうち、6人は江沢民派だったので、胡錦濤(元国家主席)がどんなに反腐敗運動をしようとしても、腐敗の総本山である江沢民の派閥がいたので多数決議決で否決され、実行できなかった。胡錦濤はその無念を晴らすために、習近平に全権を渡し、思い切り反腐敗運動ができるようにチャイナ・セブンのメンバー構成に徹底して協力した。だから習近平政権では、多数決議決をするチャイナ・セブンの中に反対票を投じる者がいないので、習近平の提案は全て可決する。投票は記名投票である。
中共中央紀律検査委員会での決定は、チャイナ・セブンでの党内序列ナンバー5である王岐山が書記をしていても、そこには6人の副書記、19人の常務委員や多数の委員がいるので、そこでも多数決議決で決める。重大事項に関しては必ずチャイナ・セブンの承認を得る必要がある。恣意性は低い。