最新記事

中国共産党

中国の腐敗はどこまでいくのか? 腐敗を取り締る中紀委の財政部トップが取り調べを受ける

2017年8月28日(月)16時15分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

第18回党大会以降の腐敗問題逮捕者数

中国共産党機関紙の人民日報の電子版「人民網」は第18回党大会における習近平政権誕生から2017年1月9日までの中央紀律検査委員会による逮捕者数を報道している。それによれば、全国の紀律検査委員会で立件され(裁判にかけられた)件数は116.2万件で、党籍剥奪や公職追放などの党規約による紀律処分(行政処分)を受けた人数は119.9万人であるという。そのうち、中共中央の組織部から任命された中央行政省庁や省レベルなどの高級幹部(中管幹部)(大臣や省・直轄市の党書記クラスなど)で、立件されて審査を受けた(裁判を経て実刑などを与えられた)者の人数は240人で、紀律検査処分を受けた者の数は223人であるとのこと。

その後のデータでは、2017年前半だけで20万人が取り調べを受け立件されたというから、腐敗は尽きることなく湧き出していることになる。

これらは「虎狩り(国家、省レベルの高級幹部)」、「ハエ叩き(中級幹部、党員)」、「蟻探し(村レベルの下級幹部、党員)」だが、さらに「キツネ狩り(海外に逃亡した者)」が2014年から始まり、アメリカの協力などを得て2566人を探し出して捕まえている。

反腐敗運動は権力闘争ではない

これを以て権力闘争と分析したのでは、中国の真の姿を分析することはできない。

100万あるいは200万人もの幹部を「政敵を蹴落とすために腐敗を名目として逮捕する」などということができるだろうか。そのようなことに専念していたら、政権は運営できなくなってしまうだろう。いま習近平政権は、一党支配体制を維持するために、習近平とトランプのどちらが世界を制するかに専念している。国内の権力闘争に明け暮れているのではない。権力闘争だと煽って、日本国民を喜ばせ安心させるのは、日本の国益を損ねる。

反腐敗運動は、政権が盤石だからこそ実行できるのである。胡錦濤政権の時はチャイナ・ナイン(中共中央政治局常務委員会委員9人)のうち、6人は江沢民派だったので、胡錦濤(元国家主席)がどんなに反腐敗運動をしようとしても、腐敗の総本山である江沢民の派閥がいたので多数決議決で否決され、実行できなかった。胡錦濤はその無念を晴らすために、習近平に全権を渡し、思い切り反腐敗運動ができるようにチャイナ・セブンのメンバー構成に徹底して協力した。だから習近平政権では、多数決議決をするチャイナ・セブンの中に反対票を投じる者がいないので、習近平の提案は全て可決する。投票は記名投票である。

中共中央紀律検査委員会での決定は、チャイナ・セブンでの党内序列ナンバー5である王岐山が書記をしていても、そこには6人の副書記、19人の常務委員や多数の委員がいるので、そこでも多数決議決で決める。重大事項に関しては必ずチャイナ・セブンの承認を得る必要がある。恣意性は低い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中