最新記事

エネルギー

世界の石油市場支配を固める中国 ライバルは戦々恐々

2017年8月9日(水)16時19分

8月4日、中国は今年、このペースでいくと、米国を抜いて世界最大の石油輸入国となる。アジアの燃料取引において支配を強めており、地域で最も重要な市場参加者としての地位を強固なものとしている。写真は、広東省にある中国海洋石油の精製所。2009年7月撮影(2017年 ロイター/Tyrone Siu)

中国は今年、このペースでいくと、米国を抜いて世界最大の石油輸入国となる。アジアの燃料取引において支配を強めており、地域で最も重要な市場参加者としての地位を強固なものとしている。

政府統計によると、中国は今年上半期に初めて、米国よりも多くの原油を輸入した。中国の輸入量が平均855万バレル/日(bpd)であるのに対し、米国のそれは812万bpdだった。この傾向は、今後も続くと予想されている。

こうした変化は、世界の石油市場の中心が西洋から東洋に移ったことを示している。中国国営の中国石油化工(シノペック)<0386.HK>の商社部門ユニペックは今や、世界最大の石油貿易会社となった。石油輸入量を増やす中国は現在、米国に次いで世界第2位の石油消費国となっており、とりわけ上海の原油先物市場が成長するにつれ、同国は原油の世界価格の決定において、極めて重要な役割を果たすことになるだろう。

中国による石油輸入量急増の背景には精製企業の能力拡大がある。だが、その供給を吸い上げるほど国内需要は伸びておらず、ガソリンと軽油の輸出量は記録的水準にまで増加している。中国から輸出される大量の製品は、アジア諸国のライバル企業にとっては頭痛の種となっており、軽油の利益率は2016年、数年ぶりの低水準に落ち込んだ。

「中国は、東南アジアと豪州でのシェア獲得において、台湾や韓国、シンガポールといった従来の輸出拠点に対し、多くのプレッシャーを与えている」と、コンサルタント会社ウッド・マッケンジーのシニア・リサーチアナリストのジョー・ウィリス氏は指摘した。

石油精製能力の拡大と輸出増加の傾向は今後も続く見通しだ。

シノペックが最近行った説明会によると、中国は2020年までに精製能力を少なくとも250万bpd増やす計画だという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中