最新記事

中国軍

中国が北朝鮮沖で軍事演習、米朝を威嚇

2017年8月8日(火)18時50分
トム・オコーナー

中国軍の空母「遼寧」と艦載戦闘機J-15(今年1月、南シナ海) Mo Xiaoliang-REUTERS

<北朝鮮の核・ミサイル問題で北朝鮮にも米トランプ政権にも苛立つ中国が、軍事演習を実施。8月中には東アジアで武力衝突の危険も>

中国は8月7日、緊張が高まる朝鮮半島沖でミサイルを使った軍事演習を実施し、軍事力を見せつけた。核問題で対立する米朝に対し、これ以上争いをエスカレートさせるなと警告を発した格好だ。

中国海軍は東シナ海の3万9000平方キロの海域を封鎖した後、中国大陸と北朝鮮の間の黄海などで実弾演習を実施。数十隻の艦艇や潜水艦と10機以上の航空機、沿岸警備隊多数が参加したと中国国営通信社の新華社が報じた。今回の演習は、地上と海上に加え、上空の標的に対する攻撃と防衛を想定したもの。8月はアメリカと東アジアの同盟国が合同軍事演習を実施する時期に当たるうえ、北朝鮮による2回目の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験からまだ2週間経っていない。アメリカと北朝鮮の新たな動きに、アジア太平洋地域の平和を呼び掛けてきた中国政府は苛立っている。

【参考記事】北朝鮮2度目のICBM発射実験は、アメリカと日韓を分断するワナ
【参考記事】対北制裁決議&ASEAN外相会議に見る中国の戦略

「(中国は)北朝鮮に対し、もし戦争になれば中国が軍事介入するというメッセージを送った可能性がある」と、オーストラリア戦略政策研究所の中国軍事専門家マルコム・デービスは、香港の英字紙サウスチャイナ・モーニングポストの取材に対して語った。同紙は、演習はアメリカに対するメッセージでもあると語ったシンガポールの南洋理工大学の海上安全保障専門家、コリン・コーの話も紹介した。

中国責任論に反発

演習の意義を示すため、中国軍トップの重要人物が2日間の演習を視察したと、中国共産党機関紙の人民日報系英字紙グローバル・タイムズが報じた。当日は中国海軍司令官の沈金竜中将も参加したもようだ。演習場所は朝鮮半島の東側の海域で、1950年朝鮮戦争が始まって以来、核武装する北朝鮮と、アメリカとアメリカの支援を受けた韓国との間の戦争がまだ終わっていない地域だ。歴史的に中国は国境を接する北朝鮮を支持したが、一方で核とミサイル技術の性急な開発を止めるよう繰り返し求めてきた。

今年初め、北朝鮮の核ミサイル開発を食い止めたいアメリカのドナルド・トランプ米大統領は中国の習近平国家主席に接近したが、中国政府は北朝鮮問題の解決を中国に頼る「中国責任論」に反論し、アメリカと北朝鮮の双方が譲歩するよう求めた。そして、すでに数万人規模の米軍が駐留するアジア太平洋地域で軍事プレゼンスをさらに増強しようとするアメリカの戦略も強く批判してきた。中国はロシアとともに、米軍による韓国での最新鋭迎撃ミサイル「THAAD(終末高高度防衛ミサイル)」配備は自国の国家安全保障を脅かすと言って非難した。

【参考記事】北朝鮮初のICBMは日本の領海を狙っていた?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

COP29、会期延長 途上国支援案で合意できず

ビジネス

米債務持続性、金融安定への最大リスク インフレ懸念

ビジネス

米国株式市場=続伸、堅調な経済指標受け ギャップが

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米景気好調で ビットコイン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 7
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中