崩壊ベネズエラに迫る内戦の危機
――つまり体制の在り方にかかわらず、石油への依存がさまざまな危機を生むと?
そのとおり。ベネズエラだけでなく、イラクなど石油輸出を生命線とする国はどこも(この問題に)直面する。価格変動が激しい特定のコモディティ(1次産品)のみに依存する経済運営は立ち行かない。
――具体的には、石油依存はどんな形でベネズエラの2大政党制の破綻を招いたのか。
チャベスが多くの国民に英雄視される理由に関わる話だが、2大政党制は非常に腐敗していた。予算もないのにカネを使い、多くの問題を引き起こした。
(2大政党制時代の)89年に再び大統領になったカルロス・アンドレス・ペレスは貧困層支援を公約していた。だが大統領に就任した途端に新自由主義的な緊縮政策に踏み切り、公共料金を値上げした。突然の転換に抗議する市民が(同年2月に)カラカス暴動を起こし、軍隊が投入されて大勢が死亡した。
事件を記憶するベネズエラ国民にとって2大政党制は敵で、チャベスこそが英雄だ。チャベスが(99年に)大統領に就任した当時、原油価格は高騰していた。チャベスは医療や教育を無償化し、さまざまな補助金を提供し、十分な予算があるかのように振る舞った。
ないカネをばらまくには借金をするか、紙幣を乱発するしかない。だが、ベネズエラの通貨ボリバルの需要はないため(紙幣乱発で)インフレが発生した。今年のインフレ率は720%に達すると予測されている。
【参考記事】中国マネーが招くベネズエラの破綻
―― チャベスとマドゥロには、特に反対派への対応や報道の自由の面で違いがあるのか。
重要な相違点が2つある。チャベスは正当な選挙で勝利するというプロセスなしには行動しなかった。新憲法を制定した際には、国民投票で圧倒的な支持を取り付けた。一方、マドゥロは選挙を道具にできていない。
チャベスはカリスマ性のある指導者だったが、マドゥロは違う。多くのベネズエラ人は自分たちと同じく貧困層の出身で、自分たちと同じような外見や話し方をしたチャベスを愛した。独裁者に国民の心をつかむ魅力があれば、負ける心配なしに選挙という手続きを踏めるが、マドゥロにはそれがない。