韓国・文大統領、北朝鮮の脅威をテコに念願の原潜建造?
ビジネスでも韓国にとって潜水艦は重要
一方で原子力潜水艦の建造は、安全保障面だけではなく、世界有数の造船国である韓国にとっては貿易面でも重要な意味をもつようだ。
文は7月末から6日間夏休みをとっていた。といっても、北朝鮮が7月28日にICBMを発射した直後だったため、非常時にそなえて向かった先は慶尚南道鎮海海軍基地の娯楽室という、休暇と呼ぶには中途半端な場所。実際、初日にはインドネシアのリャミザルド国防相と会談、2日目以降は基地の近くにある潜水艦司令部と潜水艦安重根を訪問しており、「これでは休暇ではなく地方出張。"大統領自ら率先してしっかり休暇を取る"といった選挙公約に反している」という批判が出たほどだった。
休暇中にもかかわらず、文が外国高官と会うという特別な対応をとったのは、リャミザルド国防相が韓国造船大手・大宇造船海洋に10億ドルで発注したインドネシアの新型潜水艦の引き渡し式に出席するために訪韓していたからだった。韓国メディアthe300によれば、文はリャミザルド国防相にインドネシアの次期潜水艦建造についても熱心にトップセールスをしたという。
文は「韓国とインドネシア両国の防衛産業分野の協力が拡大発展して嬉しい。 この協力がさらに、防衛力強化にも役立つことを期待している。インドネシアは韓国製の潜水艦を最初に発注した国になったが、すでに合意した第1次潜水艦事業に続き第2次潜水艦事業でも韓国が再び参加する機会を与えてくださることを希望する」と早くも次の受注に向けアピールしていた。
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文の言葉にあるように、 インドネシアは2018年11月までに第1次潜水艦事業を終え、第2次潜水艦事業に入る予定だが、文は再び韓国企業を選定してもらえるように交渉を進める方針だ。今のところドイツが強力なライバルとして浮上しているという。
韓国の造船業界は世界的な海運不況のあおりを受け、価格競争力で強い中国に押されてしまっている。その点、潜水艦をはじめ軍艦などの建造については同盟関係がない西側諸国に中国が簡単につけいることはできない──。「北朝鮮の脅威」という大義名分の下、原子力潜水艦というフラッグシップを建造することで技術力の高さをアピールし、海外からの注文を取り付けようと文が考えているとしたら、昨年、オーストラリアの潜水艦建造の入札で初の大型武器輸出に参加して敗れた日本にとっては、"重大な脅威"となるかもしれない。