ティラーソン米国務長官の「北朝鮮との対話模索」と米朝秘密会談
ティラーソン米国務長官 Yuri Gripas-REUTERS
ティラーソン米国務長官が1日、ある時点で北朝鮮との対話を望むと表明した。米朝間では水面下の「トラック2外交」が早くから行なわれているが、休戦協定を平和条約に持っていくための交渉の裏側を考察する。
ティラーソン米国務長官発言の背景
8月1日、ティラーソン米国務長官は「アメリカは北朝鮮の政権交代を目指しておらず、ある時点で同国と対話することを望んでいる」と表明した。ワシントンのロイター電が伝えた。もっとも、「北朝鮮が核保有国にはならないと理解することが前提になる」としてはいるが。
ドナルド・トランプ氏は大統領選挙期間中の昨年6月に共和党の指名候補に確定したときの演説で「彼(金正恩)がアメリカに来るなら受け入れる」と、金正恩(キム・ジョンウン)の訪米を歓迎する意向を示した。反論に対しては、「仮に会談が実現した場合でも、公式の夕食会はやらない。会議用のテーブルでハンバーガーでも食べればいい」とかわしている。その後も何度か金正恩(キムジョンウン)と会ってもいいという類の言葉を発してきた。
大統領当選後は、4月30日の米CBSテレビの番組で、「金正恩委員長は、なかなか頭の切れる奴だ(pretty smart cookie)」と讃えたり、5月1日には、アメリカの通信社、ブルームバーグから受けたインタビューで「もし私が彼と会うのが適切な状況下であれば会う。そうできれば光栄だ」と述べている。
適切な状況とは何かというと、基本的に「北朝鮮が核・ミサイルを放棄するという条件を呑むならば」ということである。
これに関しては、5月3日のコラム「トランプは金正恩とハンバーガーを食べるのか?」で述べた。
北朝鮮が「核・ミサイル開発を先に放棄する」などという前提条件を満たすはずがない。
だから習近平にも失望を露わにしたトランプは、遂に「北朝鮮がICBM(大陸間弾道ミサイル)による米国攻撃を目指し続けるのであれば、北朝鮮と戦争になる」と述べたという。8月1日に、米上院議員のリンゼー・グラム氏が、「トランプとの会話」をNBCテレビの報道番組で明らかにした。それによればトランプは「戦争になったとしても、現地で起きる。何千人死んでもこちらでは死者は出ない(ので構わない)」という主旨のことを言ったとのこと。
方針をコロコロ変えるトランプに抵抗するかのように、ティラーソンは「対話への模索」を口にしたものと思う。
ティラーソンはさらに「アメリカ政府は北朝鮮の政権交代を目指さず、政権崩壊も求めない。朝鮮半島再統一の加速は求めず、38度線の北に米軍を派遣する口実も求めていない」と述べた上で、「アメリカが対話を望んでいるということを、北朝鮮がいつか理解することを望む」と付け加えた。