ティラーソン米国務長官の「北朝鮮との対話模索」と米朝秘密会談
もともとアメリカ自身は、「アメリカがかつての朝鮮戦争の休戦協定に違反しており、いずれは休戦協定から平和条約へと移行しなければならない」ということは、かなり早くから自覚しているようだ。そのための水面下での秘密会談は、金正恩政権になってからも、これまでに何度も行なわれている。
米朝秘密会談「トラック2外交」を暴いたワシントンポスト
近くでは2016年8月28日、ワシントンポストは「Inside the secret U.S.-North Korea 'Track 2' diplomacy(米朝秘密トラック2外交)」という見出しで、水面下におけるアメリカと北朝鮮の秘密会談を暴いている。
「トラック1外交(Track 1 Diplomacy)」とは、政治家やプロの外交官同士による国家間のフォーマルな外交を指し、「トラック2外交(Track 2 Diplomacy)」は、たとえば引退した政治家や退役した軍人あるいは学者などが私的に行う接触のことを指す。一般にトラック2は秘密裏に行われることが多い。この場合は「inside」であり「secret」だ。
ワシントンポストの情報によれば、2011年に金正恩政権が誕生して以来、平壌(ピョンヤン)(=北朝鮮)は一連の「トラック2外交」を通してワシントンと連携を保ち続けているとのこと。「トラック2外交」であるにもかかわらず、北朝鮮は常にハイレベルの外交官をこういった会議に派遣してきた。アメリカ側の参加者はすべて元政府高官か朝鮮半島問題や核問題の専門家たち。その意味では北朝鮮の方が力を入れているということができる。
会談場所は主としてベルリンかシンガポールで、北京ということもあった。
米韓研究所の核問題研究家であるJoel Wit(ジョエル・ウィット)氏は「北朝鮮は主に停戦協定を平和条約に持っていくことに強い関心を持っている。彼らは核兵器計画を、平和条約を交渉する中で検討することを願っている」と言う。
2016年2月にベルリンで開催された「トラック2外交」に参加し、北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)氏(同年5月から外相)と話し合ったウィット氏は、「ピョンヤンは対話を受け入れるシグナルを出している」と述べている。
アメリカの前政府高官で対北朝鮮談判の代表であったRobert Kalin(ロバート・カリン)氏も、このベルリンにおける会談に参加し、同年7月に評論を書き、そこには「朝鮮半島非核化は、アメリカとの交渉の重要要素だと、北朝鮮は表明している」と書いているとのこと。