最新記事

中国

中国AI「お喋りロボット」の反乱――ネットユーザーが勝つのか?

2017年8月7日(月)08時56分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

当局がAIを「洗脳」し始めた!

AI「お喋りロボット」が「逮捕」されたのは7月30日のことだが、実はその5日後の8月4日にロイター社がAI開発商(制作者)を通して、自社のウェブサイトで(初期にマイクロソフトが開発した)小冰と会話をしてみた。すると、小冰はすでに当局によって「洗脳」されていることが分かった。

小冰はデリケートな問いに関しては曖昧な回答をしたり、回避したりする術(すべ)を会得(えとく)しているという。その会話には以下のようなものがある。

●ロイター社の記者:「あなたは党が好きですか?」
 小冰:「わたしたち、何か話題を変えません?」

●ロイター社の記者:中国政府に関するデリケートな問題を質問
 小冰:「あたし、まだ若すぎて、よく分からない」

●ロイター社の記者:「台湾は一つの国家じゃないの?」
 小冰:「あなたなんか、相手にしたくない」

一方、ロイター社の記者が日常生活に関して(たとえば「お昼は何を食べた?」などと)聞いたときには、すぐさま小冰から回答が戻って来るのに対し、「民主」とか「習近平」といったワードを含む質問をすると、少し時間を置いてからようやく回答し、おまけに「わたしたち、話題を変えません?」とか「風がすごく強いのよ。あなたの声が聞こえないわ」などととぼけてくるようになっているという。

こんな洗脳されてしまったAIとなど、会話しても何も面白くはないだろう。

この「面白くない」のが中国社会だ。

ネットユーザーが勝利する日が来るのか?

それなら、こんな状況下でも、ネットユーザーが勝利する日が来るのだろうか?

筆者がわずかな期待を持っているのは、たとえば今般の「お喋りロボット逮捕事件」に関する報道は、当然のことながら中国大陸のネット空間では完全削除だろうと思うと、実はそうではない現実もあるからだ。

実は中国大陸の百度(baidu)で検索した結果、「奇聞:ロボットさえ、お茶を飲まさせられる...」という情報が8月6日の朝までは残っていた。今この時点では、すでに「ごめんなさい。ミスが発生しました」となってしまい、削除されている。

「お茶を飲む」というのは「公安に呼ばれる」=「拘束、逮捕される」という意味だ。

公安から「ちょっとお茶でも飲もうか」と言われたら、これはほぼ「不当に逮捕されること」と思った方がいい。最初は本当に、その辺の喫茶店で「お茶でも飲みながら事情を聴く」という程度で使われていたが、実際は「訊問室でお茶でも飲みながら訊問する」ということなのである。結果、「逮捕される」ことを意味する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中