最新記事

国際政治

トランプ ─ 北朝鮮時代に必読、5分でわかる国際関係論

2017年8月21日(月)19時30分
スティーブン・ウォルト(ハーバード大学ケネディ行政大学院教授=国際関係論)

5) 社会構成主義

私は構成主義者ではないが、国家と人間社会の関係が、絶えず変化する規範やアイデンティティーによって形作られていることは認めざるを得ない。

そして規範もアイデンティティーも所与のものではなく、人間同士の営みの産物だ。話し方や書き方、変遷する我々の考えや信念も、規範とアイデンティティーの形成に関わっている。

愛国主義や、奴隷制度の廃止、戦時国際法の発達、マルクス・レーニン主義の台頭と崩壊、同性婚の受容他、世界の重要な事象を理解するには、社会的現実を物理の法則と区別することが不可欠だ。

社会的現実は、人間がやること、言うこと、考えることによってどんどん作り変えられていく。人間の態度や規範、アイデンティティー、信念がどう進化するかを予測することはできない。

国際関係にはこうした側面もあることを意識していれば、盤石と思われた国際政治の正統な理論が突然吹き飛んでしまった時も、完全に不意を突かれずにすむはずだ。

* * *

これで国際関係論の5分間大学は完結だ。国際関係論を学んだ学生が卒業から5年後まで覚えているのはこの程度だ。

もちろん、専門家レベルの知識を身に着けたいなら、大学院に行くことを検討しなければならない。それを決断するには、少なくともあと5分はかかるだろう。

いずれにせよ、国際関係論に興味をもつ読者には心からお祝いを言おう。あなた方に引き継ぐべき複雑な問題は山ほど残っている。知れば知るほど刺激的になることは請け合える。

(翻訳:河原里香)

From Foreign Policy Magazine



【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!

ご登録(無料)はこちらから=>>


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

12月住宅着工戸数は前年比マイナス2.5%、8カ月

ビジネス

みずほ証の10ー12月期、純利益は4.4倍 債券や

ビジネス

アングル:中銀デジタル通貨、トランプ氏禁止令で中国

ビジネス

日本製鉄、山陽特殊製鋼を完全子会社に 1株2750
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 9
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 10
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中