トランプに冷遇された文在寅が官僚を冷遇する
もっとも、文が大統領になった経緯を考えれば官僚主導から政治主導への動きは自然な流れだ。朴政権時代に起きた旅客船セウォル号沈没事故では、官僚と業者の癒着による違法な船体改造が事故原因の1つと指摘され、世論では「官僚マフィア」の政治力を弱める声が高まっていた。
ただ、行き過ぎた政治主導に警鐘を鳴らす声はメディアにも広がっている。韓国最大紙の朝鮮日報は「大統領は自分とウマの合う人を大臣に指名することができるが、今回の人事は度を越えている」と指摘。実績や能力のある官僚を排除する方針は「国政を市民団体感覚で処理している」と厳しく批判した。
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こうした文政権の方針をかつての日本の民主党政権になぞらえて先行きを懸念する声もある。ネットメディア大手のプレシアンは、09年に自民党を倒した民主党政権が沖縄の基地問題で外務省や防衛省官僚と軋轢を生み、米政府からも反発を受けて求心力を失ったと指摘。「楽観的思考に陥って失敗した日本の民主党の政権運営から教訓を得なければならない」と、戒めている。
トランプから与えられた宿題に、文は政治主導で対応するだろう。ただ、露骨な官僚排除を続ければ政策の実行段階で行き詰まる恐れもある。特にトランプがこだわる貿易赤字の解消には、米韓自由貿易協定(FTA)交渉を行った官僚の経験値が不可欠。もし文が彼らをさらに排除すれば反発は必至だ。帰国した文を待っていたのは「官僚マフィアの逆襲」かもしれない。
[2017年7月11日号掲載]