最新記事

軍事

日本の中期防衛計画、最大の敵は財政上の制約か

2017年7月3日(月)10時45分
辰巳由紀(米スティムソン・センター主任研究員)

ただし、日本の防衛政策にとって最も困難な課題は別にある。財政上の制約だ。日本の防衛予算はアメリカの約10分の1。安倍政権は発足以来、防衛予算を増やし続けているが、増加ペースは決して速くない。現在もGDPの1%未満だ。

6月の中間報告は、具体的な参考例としてNATO諸国のGDP比2%という数字に触れた点で、過去の提言とは明らかに違う。だが日本の厳しい財政状況で、防衛費の大幅な予算増をどうやって実現するかは不透明なままだ。既に導入または導入を予定しているF35Aステルス戦闘機、無人偵察機グローバル・ホーク、オスプレイ、AAVなどの装備を考えれば、たとえ防衛費がGDPの2%に増えてもまだ足りないかもしれない。

【参考記事】ヨーロッパを遠ざけロシアを引き寄せたトランプのNATO演説

今の日本に「欲しいものリスト」を膨らませ続ける余裕はない。防衛能力の目標達成を図る上で、新たな装備調達と既存の装備の近代化・更新のどちらが費用対効果が高いのか、真剣な議論が求められている。目標を達成できていない研究開発プログラムがあれば、中止の検討も必要になる。

日本の防衛計画に予算の制約がある以上、競合する装備調達計画の間で「ゼロサム」方式の意思決定、つまり総量規制に基づく計画の取捨選択を迫られることは避けられそうにない。

中間報告をまとめた議員たちは「欲しいものリスト」に新たな装備を追加するよりも、将来の防衛計画のために困難な、だが必要な議論を始めたほうが賢明かもしれない。

From thediplomat.com

[2017年7月 4日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中