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テクノロジーLEDが照らし出す癌細胞撲滅への道
光を送り込んでスパイ活動させるようなものだとキムは言う Wilmot Cancer Institute/University of Rochester Medical Center
<LEDチップが放つ光に導かれて、緑藻由来のタンパク質が悪い細胞だけをピンポイント攻撃する免疫療法の最前線>
免疫系を使って癌をたたく方法は合理的に思える。体内に入り込んだ異物を発見し攻撃する免疫系の能力を生かし、癌という異物を殺せばいいはず......だが、現実は甘くない。
なぜうまくいかないのか、突破口はないのか。研究の末に免疫療法は急成長を遂げ、癌治療の大きな希望となっている。それでも延命効果や症状改善などが見られたのは、免疫療法を受けた患者の40%に満たない。
そんな状況に希望の光が差そうとしている。最近の研究によれば、光学技術を使って癌免疫療法の効果アップを図れるかもしれない。
癌免疫療法の根本的な問題は、免疫系のコントロールの難しさにある。免疫系が過剰反応すれば正常な細胞まで傷つけ、反応が弱過ぎれば効果がない。
しかも敵は手ごわい。腫瘍細胞は免疫細胞の監視・攻撃に対抗して免疫系を抑制し、耐性を獲得する。T細胞(白血球中のリンパ球の一種で免疫系の要)を補充する方法もあるが、免疫系が正常に機能しなくなり、臓器に取り返しのつかないダメージを与える恐れがある。
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米ロチェスター大学のキム・ミンス教授は、光に反応する藻を使って腫瘍に対する免疫反応をコントロールできないかと考えた。
藻が光に反応することは以前から知られている。今から210年前に微小緑藻類の細胞内部の運動が記録されて以来、緑藻が光合成を行う経路が解明されてきた。光が当たると陽イオンを細胞内に取り込む、緑藻由来のチャネルロドプシンというタンパク質が発見されたのが05年。12年には、その立体構造も解明された。
キムらはこれに目を付け、耳に悪性黒色腫(メラノーマ)のできたマウスにチャネルロドプシンを含むT細胞を注入。光学の専門家と共同で作成したLEDチップも体内に埋め込んだ。
マウスに装着した小型電池を使って腫瘍付近のLEDを点灯したところ、光の刺激でT細胞内のチャネルロドプシンが活性化。副作用なしでメラノーマをほぼ死滅させたという。
治療対象はメラノーマなど表皮付近の腫瘍に限られる可能性があり、人間でも成功するとは限らない。それでも専門家からは、光で制御できるキラー細胞を使って腫瘍だけを攻撃する治療法はそう現実離れした話ではないかもしれないとの声も聞かれる。
実用化されれば癌との闘いに強力な新兵器が加わりそうだ。
[2017年7月11日号掲載]