ISIS占領で廃墟の街フィリピン・マラウィ 武装勢力の戦闘最前線
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地図を確認するフィリピン兵。1日撮影(2017年 ロイター/Jorge Silva)
板でバリケードを張った2階建て住宅のバルコニーに大の字に寝そべり、板に空けた穴からライフルの銃身をのぞかせると、フィリピン軍の狙撃手は、撃つ前に静粛にするよう求めてきた。
「(今から)撃つ」と彼が冷静に言うと、50口径ライフルの銃声が響き、家中にこだました。彼は、同国南部ミンダナオ島のマラウィ市を5週間にわたり占拠しているイスラム武装勢力のアジトと見られる、1キロも離れていない住宅を狙ってるのだ。
隣には、射弾の観測や修正を担当する観測手が座り、別の穴から狙いを見定めていた。狙撃手は静かな声で言葉を交わしながら、アグス川を挟んだ対岸にあるマラウィの商業地区目がけてさらに3発の銃弾を撃ちこんだ。
武装勢力が占拠する対岸は、破壊された建物のがれきが散乱する戦闘地区になっている。そこには、たくさんの死体が腐敗しており、悪臭が火薬の臭いと入り混じっている。
過激派組織「イスラム国(IS)」に忠誠を誓う武装勢力による5月23日の電撃攻撃で占拠されたマラウィ市を奪還するため、数千のフィリピン軍兵士が戦っている。
フィリピン南部は過去数十年の間、武装勢力による反乱や、山賊行為に苦しんできた。だが、マラウィでの激しい戦闘、そして地元武装勢力と肩を並べて戦うインドネシアやマレーシア、イエメン、チェチェン出身のIS戦闘員の存在は、同組織がイラクやシリアで足場を失いつつあるなか、この地域が東南アジアにおける拠点となりつつあるとの懸念を生んでいる。
占拠を封じ込めるためにフィリピン軍が送り込まれたが、進展が緩やかで、困難かつ慣れない市街戦になるとは、誰も予期していなかった。
「われわれは、反乱には慣れている。だがこのような規模での展開やこの種の紛争は、われわれの部隊にとっては試練だ」。マラウィでの作戦指揮官の1人、クリストファー・タンプス中佐はそう語った。
マラウィ制圧作戦は、武装勢力が仕掛けた手りゅう弾が仕込まれたガスタンクなどの偽装爆弾に手こずっていると同中佐は言う。