AIを使えば、かなりの精度で自殺を予測できる
そこで研究者らが提案するのが、数々の危険因子から有用なパターンを見つけるAIのアルゴリズムの開発。クリニカル・サイコロジカル・サイエンス誌に最近掲載された論文は、その将来性を示している。
バンダービルト大学医療センターのコリン・ウォルシュ助教はリベイロらと共に、自殺未遂や自傷行為で入院した患者3250人と、自殺未遂の経験がない患者1万2695人の電子カルテを比較。人種や年齢、薬の服用、既往症など診察で得られるデータに限定してコンピューターに機械学習させ、1週~2年間の期間で自殺を予測できそうなパターンを見つけ出させた。
するとAIアルゴリズムの予測精度は「2年以内に自殺を試みる可能性」で86%、「1週間以内」では92%に達した。ちなみに、リベイロらがメタ分析した各種要因の精度は約58%だ。
難しいのはこれを治療にどう生かすかだ。データの共有法や、自殺の危険性を誰に知らせるかという問題がある。自分の勘より機械を信じるよう、医師たちを納得させるのも大変だ。ウォルシュが考えるのは、コンピューターの助言を参考にして医師が判断する「ハイブリッド」な方法。反対に、人間の判断がコンピューターに入力するデータになると想定する専門家もいる。
自殺は家族や周囲の人々を打ちのめす悲劇。アルゴリズム利用の課題は多いが、ひるまずに自殺増加に歯止めをかける努力を続けるべきだ。
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