最新記事

朝鮮半島

朝鮮戦争休戦から64年 北のミサイル実験も日常となった韓国の悪夢

2017年7月28日(金)13時18分

 7月26日、休戦から64年を27日に迎えた朝鮮戦争で休戦協定が協議された板門店への玄関口である韓国最北端の坡州市では、北朝鮮による大陸間弾道ミサイルの発射実験で高まっている緊張などみじんも感じられない。写真は、自分で造った地下シェルターを案内するWoo Jong-ilさん。同市で14日撮影(2017年 ロイター/Kim Hong-Ji)

韓国の首都ソウルから車で北に30分ほど有刺鉄線沿いの幹線道路を走ると、サッカースタジアム数個分の広さを擁するショッピングモールが2つある。その目と鼻の先にあるのは、南北朝鮮を隔てる世界有数の軍事境界線だ。

モールは北朝鮮との非武装地帯(DMZ)に接する韓国最北端の坡州市にある。ここは、27日に休戦から64年を迎えた朝鮮戦争(1950─53年)で休戦協定が協議された板門店への玄関口だ。当時はまだ言葉を交わしていた両国だが、最近では口も利かなくなった。

「坡州でおとぎ話が現実に」と韓国観光公社の広告はうたっている。だが朝鮮戦争のさなか、同市では最も激しい戦闘が行われ、それはまさに悪夢としか言いようのないものだった。ここには、韓国で唯一の「敵の墓地」があり、中国と北朝鮮の兵士が眠っている。

今となっては、ほとんど忘れられたも同然の歴史である。ロッテ・プレミアムアウトレットの屋上からは、子ども連れの家族が、臨津江の向こう側の北朝鮮を双眼鏡で見ることができる。このモールにはメリーゴーラウンドや映画館、ミニ鉄道もある。

一方、新世界百貨店<004170.KS>が経営する坡州プレミアムアウトレットでは、うだるように暑い7月のある日、施設内の噴水の周りで大勢の子どもたちがはしゃぎ回っていた。ここから数キロ離れた場所に、人気観光地の南仏プロバンスをモデルに造られた村「プロバンスマウル」があり、絵本に出てくるようなレストランやパン屋、衣料品店が建ち並ぶ。

また、市内には他にも、子どもが美術館で木彫りのピノキオ人形を作ったり、大人が農園で野生のブドウから作られたワインを試飲したりできる場所もある。

北朝鮮が、米国の独立記念日である7月4日に大陸間弾道ミサイルの発射実験を実施して以来、高まっている緊張など、ここ坡州市では、みじんも感じられない。同ミサイル実験を受け、米韓は同市付近の上空で合同軍事演習を行った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

米中古住宅販売、10月は3.4%増の396万戸 

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中