朝鮮戦争休戦から64年 北のミサイル実験も日常となった韓国の悪夢
散らばった地雷
しかしプロバンスマウルで出会った、ソウル南部から来た会社員で、4歳の息子を持つKim Ki-deokさん(41)は、軍事境界線の近くにいても危険を感じないと話す。
「北朝鮮が本当にやる気なら、遠くからでもミサイルを撃つことができる」とKimさん。「リフレッシュできたし、ここにまた来たい」
こうした無頓着さは、南北の軍事境界線に接するDMZ付近の米軍基地「キャンプ・ボニファス」でも見受けられる。坡州市郊外にある同基地には、米スポーツ・イラストレイテッド誌がかつて「世界で最も危険なゴルフコース」と呼んだミニゴルフコースがある。朝鮮戦争時の地雷が至る所に散らばっているからだ。
朝鮮戦争は休戦協定により休戦しているが、いまだ平和協定は結ばれておらず、韓国と北朝鮮は厳密に言えば戦争状態にある。
韓国人は最悪のシナリオの中で生活するのに慣れ切っている。そのシナリオとは、北朝鮮の大砲1万門が韓国に向けられ、いつでも発射可能な状態にあり、北朝鮮の宣伝組織の言葉を借りれば、ソウルが「火の海」や「灰の山」になることだ。
北朝鮮のこけおどしにすぎない、と30歳のPark Chol-minさんは一蹴する。
「ただの見せかけ、パフォーマンスだ。ソウルを火の海にしても、北朝鮮は得るものよりも、失うものの方がはるかに大きいと思う」と、ソウル出身のビデオゲーム・プロデューサーのParkさんは語る。恋人の誕生日プレゼントを買うため、彼女と坡州プレミアムアウトレットにやって来たのだという。
防衛機制
坡州市は2000年代にリベラル政権が北朝鮮に対して「太陽政策」を取って以降、北朝鮮関連の観光事業を強化。外国人や韓国人は、警備に当たる無表情の北朝鮮兵士や北朝鮮が掘った地下トンネルを見ようと、または朝鮮戦争末期に捕虜が交換された自由の橋がある臨津閣に行こうと板門店に押し寄せた。
観光事業は、韓国の小売り大手である新世界百貨店とロッテ<023530.KS>が巨大プレミアムアウトレットを2011年後半にオープンしてから大きく飛躍した。この2つのアウトレットへの訪問者数は昨年、1200万人超に達した。ソウルの人口1000万人よりも多い。