欧州の風力発電は正念場へ 生き残り賭けた300mの超巨大風車
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英リバプール沖の風力発電所と航行中の客船。2011年9月撮影(2017年 ロイター/Phil Noble)
欧州の風力発電事業者は、高層ビルにも匹敵する、新世代の巨大風車に将来を賭けようとしている。それは欧州各国で、1990年代以降グリーン産業を形成してきた補助金が削減されるなか、彼らが生き残る鍵になるとみられている。
洋上風力発電の世界的大手であるデンマークのドン・エナジー、独EnBW、スウェーデンのバッテンフォールの3社はそれぞれ、政府の補助金削減への対応策として、巨大風車に着目しているとロイターに語った。
少なくとも、シーメンス・ガメサが、来年までに巨大風車のプロトタイプを建設し、今後5年以内に最初のウィンドファームが稼働する見込みだ、と風力発電機メーカーや技術者への取材で明らかになった。
巨大風車は、それぞれ高さ300メートルにも達し、西ヨーロッパで一番高い英ロンドンの「ザ・シャード」ビルとほぼ並ぶ高さで、回転面の直径は200メートルと、サッカー場2つ分を並べた長さになる。
1990年代初頭から発展を支えてきた政府補助金の段階的打ち切りが決まり、風力発電業界は重要な岐路に立たされている。欧州各国では、風力発電を商業採算ベースに乗せ、他の電力源と競争できるようにするため、かねてからの計画通り、補助金を削減して圧力をかけ始めた。
欧州の洋上発電産業の拠点となっているデンマーク、ドイツ、オランダ、英国は、今後10年で段階的に補助金をなくす方針だ。事業者にとっては重要な収入源が絶たれることを意味する。2014年に実施された入札では、補助金はいまだに欧州の風力発電事業の収入の半分程度を占めていた。
こうした状況を受け、ドン・エナジーとEnBWは、2024年に運転を開始するドイツ風力発電所プロジェクトの4月入札において、補助金を考慮しない事業計画案を提示した。補助金ゼロを前提とした入札は業界初で、風力発電業界の一里塚となる出来事となった。
その一方で、風力発電事業者がいかに利益を上げて自らの存続を図りつつ、石炭火力や原子力発電の代替となり得る商業的に魅力的な電力提供ができるのかとの疑問の声も上がった。
事業者によると、答えは、巨大風車だ。より多くの風を捉え、メガワットあたりの発電コストを下げることができるという。巨大風車1台あたりの出力は10─15メガワットになる。現在稼働している最大の風車は、三菱重工業とデンマークのベスタスの合弁企業「MHIベスタス」が製造したもので、高さ195メートル、出力は8メガワットだ。