最新記事

生物時計

男性にもある「妊娠適齢期」 精子の老化が子供のオタク化の原因に?

2017年6月29日(木)18時20分
モーゲンスタン陽子

alienhelix-iStock

<高齢の父親を持つ子供は「ギーク(オタク)」になる可能性が高くなるという研究結果が発表された>

男女のパートナーの不妊問題が語られるとき、長い間それはおもに女性側に原因があると考えられてきた。また、バイオロジカル・クロック(「生物時計」すなわち「妊娠可能な年齢の限度」の意。一般的に35歳くらいまでと考えられている)のために該当する女性たちに、本人の意思にかかわらず結婚・妊娠を迫るような風潮もある。

だがこのところ、最新の研究結果などを受けて、専門家たちが次々に声をあげ、年齢による 精子の質の衰えや、男性側に不妊の原因がある場合、そして男性側の「バイオロジカル・クロック」にも注目が集まっている。

男性セレブが悪影響?

これまでの多くの研究で、不妊ケースの20〜30%は男性側のみが原因、全体では半数のケースに部分的に関与していること、また40歳以上の男性、とりわけ45歳以上では精子の量と質が下がり、45歳以上のパートナーを持つ25歳以下の女性の場合、男性が25歳以下の場合に比べ妊娠までに5倍の時間がかかり、流産の可能性は倍になる、などの結果が出ている

これらの結果を受け、ガーディアンに不妊治療専門家が、女性だけでなく男性も自らの「バイオロジカル・クロック」についてもっと意識するべきだとの意見を寄せている。また、50代〜70代のセレブリティの男性たちが父親になったというニュースがしばしば世間を賑わすが、このような報道が男性にもバイオロジカル・クロックがあるという事実から目をそらす原因になっているとも指摘する。

精子を衰えさせるもの

45歳以上の男性の精子には多くの損傷が見られ、それが妊娠の起こりにくさや流産につながる。年齢のほかにも、喫煙や過度の飲酒、娯楽的なドラッグの使用、不健康な食事、座りっぱなしの生活や体重過多などが精子の質や量に影響を与える。しかも、これらを改善しようと健康的な生活に切り替えても、体が新しい精子を作り出すには3ヶ月かかるという(ガーディアン)。

さらに28日には、WHO基準の「郊外の道路程度」に相当する夜間騒音レベルである55デシベル以上のノイズにさらされ続けることが男性の生殖能力の著しい低下につながるというソウル大学校の最新研究結果をUPI通信が報じている。

【参考記事】カナダで性別を定義しない出生証明書実現の見込み

ポジティブなとらえ方も

たとえ子供を授かったとしても、45歳以上の父親の場合は子供に低身長症などの症状がみられる場合がある。また、自閉症やADHD(注意欠如・多動性障害)と診断される可能性が、20〜25歳の父親の場合のそれぞれ5倍、13倍になるという。

とは言っても、ポジティブな知らせもある。高齢の父親を持つ子供は「ギーク」になる可能性が高くなるという研究結果が、先週Newsweek米国版をはじめ多数のメディアで報告された。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

WHO加盟国、パンデミック条約で合意 交渉3年余り

ビジネス

金価格、初の3300ドル台 貿易戦争で安全資産に買

ビジネス

日銀、25年度成長率下方修正の可能性 米関税措置受

ワールド

ガザはパレスチナ人と支援者の「集団墓地」化=国境な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 2
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ印がある」説が話題...「インディゴチルドレン?」
  • 3
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 4
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 5
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 10
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 9
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 10
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中