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小池都政に「都民」と「民意」は何を求めているのか

2017年6月23日(金)16時05分
金井利之(東京大学大学院法学政治学研究科教授)※アステイオン86より転載

②「遊興」への都性~東都政から舛添都政まで~

 都政の画期が、東龍太郎・都知事(任一九五九~六七年)のもとでの一九六四年の第二次東京五輪である。都政は「劇場」として整備・清掃・美化・浄化(注11)が進められていく。第二次東京五輪の「レガシー」とは、東京都政に、真面目な行政サービスの提供に力を入れず、「遊興」に現を抜かすエートス(性向)を埋め込んだことである。相対的に豊かな東京の経済活動は、「遊興」を可能にした(注12)。

 美濃部亮吉(任一九六七~七九年)は、新聞の一面に載ることを目標にした「革新都政」であった。鈴木俊一(任一九七九~九五年)は、美濃部都政の「財政破綻」を短期間で再建したという「玄人演技」を展開した。上記の通り、都財政は豊かであり、放置すれば自然と再建するので、特段の行財政運営の手腕は必要ない。重要なことは、本来「遊興」において「主役」を務める能力のない「過去官僚」が「遊興」を提供するとすれば、燻銀(いぶしぎん)の「脇役」ぶりを売り出すしかない(注13)。しかし、鈴木都政の後半は、臨海部副都心と世界都市博の「遊興」にのめり込み、最後は「地下鉄サリン事件」という「遊興」にならない事件で終了した。青島幸男(任一九九五~九九年)は、世界都市博の中止という「遊興」を成し遂げたものの、「第二作」以降がなく一期で幕引きとなった。都知事の名字は、『踊る大捜査線』の主役にのみ生き残った。

 石原慎太郎(任一九九九~二〇一二年)都政は、「石原軍団」宜しく、当初は華々しい「遊興」を提供して、平均的都民の喝采を浴びた。例えば、銀行外形税の導入、新銀行東京の設立、都立大学の解体、ディーゼル車規制などの目立つ政策である。しかし、いずれも真面目な施策としてはほとんど効果がなく、築地市場の移転を決定したものの、今日に続く「演目(注14)」の起源を生み出しただけである。尖閣都有化の「遊興」が挫折して、結局、本分の「遊興」として、東京マラソンを開始し、第三次東京五輪に立候補しただけである。最終的には、東日本大震災という「遊興」にならない事態において、惨憺たる幕引きとなった。

 その後は、猪瀬直樹(任二〇一二年一二月~一三年一二月)・舛添要一(任二〇一四年二月~二〇一六年六月)が都知事になったものの、第三次東京五輪開催を決定できた他は、充分な「遊興」提供できなかった。結局、都「戯」会「戯」場において、都知事の不祥事自体を「かばん芸」などとして自演するしかなくなり、両知事は都民の不興を買って退陣した。その後、初の「女優(キャスター)」である小池百合子(任二〇一六年八月~)が「選挙(オーディション)」で採用され、「小池劇場」が開演した。

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