シリアで米軍機を撃墜すると脅すロシアの本気度
シリアのロシア軍基地フメイニムで待機するロシア軍機(6月18日) Vadim Savitsky-REUTERS
<ロシア国防省の警告は脅しに過ぎない、というもっともな見方もあるが、警告の効果は既に表れはじめている>
今週月曜に米海軍の戦闘機がシリア政府軍機を撃墜したのを受けて、ロシアは今後、シリア西部を飛行する米軍機をロシア軍の「標的」とみなすと警告した。米ロともシリア内戦に介入しているが、ロシアはシリアのバシャル・アサド政権を、アメリカは反政府勢力をそれぞれ支援している。
ロシア国防省とロシア外務省は米軍による撃墜に猛反発し、今後はシリア西部を飛行する米軍機を「追跡」し、シリア上空での衝突回避のために2015年に設置したアメリカとの通信を遮断すると発表した。ロシアによる一連の警告について、専門家は懐疑的な見方を示している。一体ロシアは本気で対抗措置を取るつもりなのか。それともあえて過激な表現を使って強いロシアを見せようとしたのか。
ロシアが一方的にアメリカとの通信を遮断すると脅したのは、今回が初めてではない。ロシア外務省は4月にも、通信の遮断を通告した。そのときは、アサド政権による化学兵器使用に怒ったアメリカが、シリアの空軍基地にミサイルを撃ち込んだことへの対抗措置だった。
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英シンクタンク英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)の研究者サラ・レインは、当時ロシアが実際に米ロ間の通信を遮断したかどうかはっきりせず、恐らく今回も本当には遮断しないだろうと指摘する。
トランプが生んだ不確実性
「ロシアがアメリカとの通信を遮断するのは現実的でない。ロシア自身のためにならない」とレインは言う。「とくに今は、緊張が高まったときのアメリカの出方が以前より予測不能になっている」
レインによれば、バラク・オバマ前政権のときに途中からシリア空爆に参加したロシアがあっという間に主要プレイヤーになれたのは「米軍はロシアとの軍事衝突を避ける」という計算があったからだ。
しかしドナルド・トランプ米大統領の就任後、「米軍はシリア内戦で以前より大胆な作戦を実行する裁量を与えられた」とレインは言う。「そのことが、ロシアを躊躇させている」
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ロシア国防省の警告はいかにも大げさだった。わざわざ「標的」という言葉を使い、ロシア軍はユーフラテス川から西を飛行する米軍機を撃ち落とす可能性があると発表したのだ。だが、一体どのような状況下で撃墜するのかについて、レッドライン(越えてはならない一線)を引くことは避けた。