中国一帯一路、パキスタン建設事業を欧米からもぎ取った「力技」
送電線
送電線の整備プロジェクトは政府間の契約で、沿岸部のマティアリ近郊に建設される複数の発電所と、東部ラホール周辺の産業地域の間の878キロを結ぶ計画だ。
パキスタン政府高官によると、この計画は昨年12月に中国側の受注が決まったが、公式な競争入札は行われなかった。
だが、2016年半ばに国家電網との協議が難航した際に、GE,シーメンスとABBへの接触が試みられたという。
ダーガ氏は、昨年8月にパリで行われた電力会議の折りに、3社の代表と短時間面会し、送電線契約について非公式に協議したとロイターに明らかにした。
パキスタン電力規制庁の資料と、GEの見積もりに詳しい人物によると、GEの変電所建設の見積もりが8億ドルだったのに対し、国家電網の初期段階の提案は12.6億ドルだった。
これによりコストは抑えられるものの、シャリフ政権が問題にしたのは工期だった。シャリフ首相は、2018年8月に行われる総選挙の前に停電を解消させることを公約していた。
そのため、ダーガ氏は西側企業に対し、国家電網と同様に、工期を27カ月に短縮するよう求めたという。
「冗談でしょう、不可能だ、というのが彼らの返事だった」と、ダーガ氏は振り返る。工期は最低48カ月必要というのが、西側企業の見立てだった。「彼らは、提案を用意し、銀行から融資を取り付けるだけで、最速でも8─9カ月かかると言った」
ある西側のエネルギー企業幹部は、こうした面会があったことを認めた。この件に詳しい別の欧州企業幹部は、「国際企業は、このプロジェクトに入札する機会を得られなかった」と述べた。
GEとシーメンス、ABBは、取材に応じなかった。
時間の問題
パキスタン国内には、このプロジェクトを急がせる圧力があったと、政府や規制関係の官僚は指摘する。
プロジェクトを許可した電力規制庁の高官は、中国側が提案を取り下げて契約が不調になる恐れがあるとして、国家電網の提示価格を受け入れるよう政府が規制庁側に圧力をかけたと述べた。