最新記事

ドラマ

再び『ツイン・ピークス』の迷宮へ

2017年6月14日(水)10時00分
ローラ・ミラー

殺人犯ボブに体を乗っ取られた特別捜査官クーパーの魂はブラック・ロッジから出られずにいる SHOWTIME/YOUTUBE

<25年の時を経て復活したカルト的人気ドラマの続編は、オリジナル版にも増してデービッド・リンチのシュールな世界が全開>

TVドラマ『ツイン・ピークス』がアメリカで初放送されたのは90~91年のこと。カナダに近い田舎町ツイン・ピークスで起きた女子高生殺人事件をきっかけに、町の人々の複雑な人間関係が暴かれていく――と言えば単純に聞こえるが、物語は異様な展開を見せていく。

ツイン・ピークスの森の奥には、死者の魂と生者の魂が交流する場所ブラック・ロッジへの入り口がある。赤いカーテンに囲まれたその空間では、小さな男が奇妙なダンスを踊り、巨人が謎めいた助言をくれる。一方、殺人犯ボブの魂は、別の人間の体を乗っ取って、新たな殺人を犯していく......。

そんなドラマが、米3大ネットワークのABCでゴールデンタイムに放送されたものだから、大きな話題(と議論)になったのは言うまでもない。映画監督のデービッド・リンチが製作総指揮・演出を手掛けたことも、映画監督がテレビドラマを手掛けるトレンドの先駆けとなった。

あれから25年(と1年)。殺されたローラ・パーマー(シェリル・リー)がブラック・ロッジで、「25年後に会いましょう」と言ったとおり、『ツイン・ピークス』が戻ってくる。

今度はケーブルテレビ局ショータイムの放送で、ABCのような制約が少ないせいか、『ツイン・ピークス The Return』では、オリジナル版以上にリンチのシュールな世界が全開だ(日本ではWOWOWで7月22日から放送予定)。

実際、オリジナル版でリンチが演出を手掛けたのは2シーズン30話中6話だけだったが、今回は全18話を手掛けるという。そして今回も、マーク・フロストがリンチと共に製作と脚本を担当している。

【参考記事】トランプ時代に『24』が帰ってきた

25年前のファイルを開いて

FBI特別捜査官のデイル・クーパー(カイル・マクラクラン)は、オリジナル版の最終回でボブに体を乗っ取られてしまったため、その魂はブラック・ロッジから出られずにいる。一方、ボブに乗り移られた悪人クーパーは、日焼けした顔に長髪で、サウスダコタ州でごろつきのような生活を送っている。

ツイン・ピークスの懐かしい面々は健在だ。保安官事務所の秘書ルーシー(キミー・ロバートソン)は、気弱な警部補アンディ(ハリー・ゴアス)との間に24歳の息子がいる。

アメリカ先住民のホーク(マイケル・ホース)は、ツイン・ピークス警察の副署長になっていて、いつも丸太を抱いている女性(キャサリン・E・コールストン)から電話をもらう。そこで25年前のローラ・パーマー殺人事件のファイルを見直さなければならなくなる。

どこまでも続く森や、ぽつんと立つ踏切、随所に織り込まれるラジオが壊れたような機械音など、『ツイン・ピークス The Return』には、オリジナル版と同じように意味深で視聴者を不安にさせるショットがちりばめられている。

同じことは物語のペース配分にも言える。第1話の冒頭で、精神科医ローレンス・ジャコビー(ラス・タンブリン)は段ボール箱を受け取る。彼がその箱からシャベルを取り出すシーンは1分近い。さらにジャコビーがシャベルにスプレーで色を塗るシーンは3分近く続く。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

IT大手決算や雇用統計などに注目=今週の米株式市場

ワールド

バンクーバーで祭りの群衆に車突っ込む、複数の死傷者

ワールド

イラン、米国との核協議継続へ 外相「極めて慎重」

ワールド

プーチン氏、ウクライナと前提条件なしで交渉の用意 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドローン攻撃」、逃げ惑う従業員たち...映像公開
  • 4
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 5
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 8
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 8
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中