最新記事

中国社会

中国「工場汚染との闘い」は掛け声倒れ 失望する住民たち

2017年6月5日(月)18時30分

5月29日、中国で最も汚染された都市が集まる河北省は、汚染源となっている企業を閉鎖すると約束してきた。だが、館陶化学工業団地の近隣で暮らし、何年にもわたり抗議行動を続けてきた住民たちは依然、半信半疑だ。写真は夜間に館陶化学工業団地の工場煙突から立ち上る煙霧。2月撮影(2017年 ロイター/Thomas Peter)

中国で最も汚染された都市が集まる河北省は、汚染源となっている企業を閉鎖すると約束してきた。だが、館陶化学工業団地の近隣で暮らし、何年にもわたり抗議行動を続けてきた住民たちは依然、半信半疑だ。

「美しい村」建設と、汚染の激しい同省重工業の「刷新」をうたう横断幕が掲げられてはいるが、南寺頭と東路荘の村々に影を落とす多数の化学プラント群は、環境保護当局からの規制に縛られることなく操業していることが多い、と住民は語る。

地元当局は空気、水、土壌を汚染する工場に目をつぶっている、と住民は指摘。特に彼らが憤慨するのは、各プラントで最もひどい汚染が発生する作業の多くが夜間に実施されており、その時間帯に検査官が訪れることはめったにない、という点だ。

「検査官は全然来てはくれない」とZhangと名乗る住民が語った。Zhangさんの家の近くには、焼け焦げた雑草に覆われた一角がある。これは今年初め、危険な化学物質を運ぶ車両が炎上した跡で、この事故によって、刺激性の煙が街路に広がったという。

「環境保護当局に電話したが、誰も来なかった」とZhangさんは言う。「耐え難い臭いで、あっというまに、あたり一面に煙が広がった」

省や県の環境保護当局にコメントを求めたところ、回答は得られなかった。館陶化学工業団地のモニタリングを担当するLiuと名乗る検査官は、ロイターの電話取材に対し「施設は24時間体制で監視されている」と話した。

約40年に及ぶ野放図な成長が環境に与えた影響に対処するため、開始から4年目を迎えた中国当局の「汚染との闘い」では、規制を破る常習犯やそれをかばう地方政府に必要な措置を取ると約束している。

河北省は北京に近接しており、事実上、首都を囲んでいる。北京を頻繁に「窒息」させている粒子状物質の約3分の1は河北省由来であるため、対策の槍玉に挙がっている。

上述した村々は、今年1─4月の公式統計で大気汚染が最も激しいとされた、鉄鋼生産の中心都市・邯鄲(かんたん)の郊外に位置している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中