重要なのに情報が少ない、「利益確定」は株式投資の盲点
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<「損失と利益の決定」を自分でしなければならないのが投資の難しさ。利益確定について考えていない人が多いが、損切りと同じように、自動で行える仕組みを作ればいい>
みなさんは、いろいろな書籍やウェブサイトなどで投資やトレードの勉強をしているでしょう。それらの指南書には一貫して「損切り」のルールに関する記述があり、それを厳格に守らなければ勝ち組にはなれない、とされています。その一方で、「利益確定」についての情報は、ほとんどないに等しいのではないでしょうか。
投資仲間との会話でも「儲かったね」「どこかで好きに利食いしなよ」などと、含み益が生じた途端に「あとはご自由に」と気を抜いてしまう場面が多く、どうやって利食いするかについて考慮しないのが典型的なパターンになっています。
しかしながら、いかなる投資も利益水準の決定が先決であり、この決定なくして投資は始まらない!と私は考えています。
なぜ利益確定は難しいのか
株式投資の盲点「ペイアウト倍率」
宝くじや競馬やカジノなどの賭け事には「ペイアウト倍率」というものがあります。
たとえば、ペイアウト倍率2倍のルーレットゲームに1000円を賭けたとします。もしあなたが勝てば、掛け金の2倍の2000円(利益は1000円)が手に入り、負ければ1000円を失います。つまり、プレーする前から「1000円の利益」か「1000円の損失」が確定しているのです。
これは大切なことで、そもそも「勝ったら1000円もらえる」という保証がなければ、誰もルーレットゲームに手を出さないでしょう。
株式投資の世界でも同じことが言えます。厳格なルールのもとに「損失と利益の決定」をしなければ、株式投資は始まらないのです。これは、株式投資だけでなく他の金融商品にも当てはまる、投資における盲点だと思います。
ただし、株式投資における「損失と利益の決定(ペイアウト倍率の決定)」は、自分自身で行わなければなりません。これが、株式投資について「なんだか難しい」「なぜかうまくいかない」という違和感を覚える要因と言えるかもしれません。
リスクを避けてしまう本能とは
利益と損失を自分自身で決定することが、なぜこれほどまでに難しいのでしょうか? あらかじめ胴元に決められた範囲でしか儲けられない賭け事と違って、自分で利益幅を決められるのですから、もっと大胆に勝負に出ることがあってもいいはずです。
そうならないのは、人間がもっている本能が作用しているからです。私たち人間には「平和になるほどリスクを取らない」という性質があります。つまり、平和になればなるほど自分自身に対する規制が厳しくなり、リスクの芽を早々に摘んでしまう心理が働くのです。
この「平和になるとリスクの芽を早々に摘んでしまう心理」が、含み益のある建玉を損になる前に早く決済してしまう行為を生んでいます。みなさんも、買った株に利益が乗ると(損になることへの恐れから)急いで決済してしまう癖がありませんか?
この原理について行動経済学の研究からわかったことは、「自分に有利な場面ではリスクを避けて、自分に不利な場面ではリスクを取ることを好む」という人間の本能が作用しているということです。
つまり、少しでも利益が出ればリスクを避けて決済し、反対に損失が出てしまったときには、「そのうち戻ってくるはず......」という願望からリスクを取って待ち続けてしまうのです。これが、いわゆる「利小損大(利益は小さくて損失は大きい)」に陥る要因なのです。