総選挙後のイギリス、EU離脱シナリオはどう変わる?
(4)離脱を延期
英国が混乱に陥ったため、離脱交渉期間を伸ばし、メイ首相が示した条件を変えるよう求める声が高まるかもしれない。第50条では、EU諸国が満場一致で合意すれば2年間の延長が認められることになっている。
しかし──。EU首脳らは、域内で亀裂を生みかねない議論の火ぶたを切るのを嫌がるだろう。首脳らはまた、欧州議会選挙が予定される2019年5月までに英国に離脱してほしいと望んでいる。
(5)イングランドだけ離脱
スコットランド行政府は、EU単一市場にとどまれるような特別合意を望んでいる。
北アイルランドについては、EUの関税同盟に残留させる案が一部から出ている。保守党と閣外協力する見通しの北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)も、国境問題に関して厳しい合意を望んではいない。
しかし──。カタルーニャ自治州の分離独立問題を抱えるスペインは、スコットランドの独自合意を阻止しようとするだろう。今回の英総選挙でスコットランド独立党が議席を減らしたことも不利に働くだろう。
また、北アイルランドをEU関税同盟に残すためには、北アイルランドと英国の他地域の間に何らかの貿易障壁を設けざるを得ず、それを避けようとすれば極めて複雑な仕組みが必要になるだろう。
(6)ソフトな離脱
英国がEU単一市場にとどまる「ソフト・ブレグジット」が、今後数カ月間の論争の中心となりそうだ。
しかし──。EU首脳側はこの案を排除はしないものの、ノルウェーに似た厳しい条件を英国に課すとしている。すなわち、見返りとして資金の拠出、EUからの移民と難民の受け入れ、欧州司法裁判所の規則順守を求めている。
これらはEU離脱派の要求とかけ離れている。またEU側も「いいとこ取り」は許さない姿勢だ。英国のソフト・ブレグジット支持派は、EU諸国は対英輸出が大きいので要求を受け入れるかもしれないと主張しているが、EUは現在、足並みの乱れを断固回避する姿勢であり、ソフト・ブレグジット交渉は時間の無駄に終わりそうだ。
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