気になるCMを連発、旅行サイト「トリバゴ」の意外な正体
トリバゴの長所を挙げれば、サイトのインターフェースが使いやすくデザインされていることだろう。メタサーチサイトによっては傘下のサイトごとにウインドーが開いてわかりにくいものがあるが、トリバゴの場合は同一画面に並んでいて比較しやすい。
また、モバイルアプリで、近くのホテルのお得情報が見られたり、当日の投げ売り価格が表示されたりするといった、細かなテクノロジー開発や工夫が見られるのもトリバゴの特徴だ。
売り上げの約87%をCMに投下
そして、執拗ともいえるテレビCMがある。これは日本だけではなく、米国やオーストラリアなどでも展開されているもので、売り上げの87%を広告に費やすというトリバゴの企業戦略の下に行われている。
各国で採用しているのは、大物スターというよりは脇役風の男女の俳優。だが、それなりに味のある人物で、何といっても1日に何度も繰り返し見ているうちに気になる存在になってくるのがミソである。米国やオーストラリアでは、「トリバゴの男」「トリバゴの女」といった呼び名で話題に上る。日本だけでなく、他国でも「気になる」CMとなっているということは、ひとまずこの戦略はうまくいっているのだろう。
トリバゴは、実はドイツの会社だ。2005年に、現在は製品担当のマネジングディレクターを務めるロルフ・シュルウムゲンツ氏ら大学の同級生4人によってデュッセルドルフで共同創設され、欧州で人気のサイトになった。
何度かの投資ラウンドを順調に経て、2012年にアメリカの旅行サイトであるエクスペディアが過半数株を買い取って買収。2016年末にナスダックに上場した。2016年12月期の売上高は7億5400万ユーロと前期比1.5倍超に拡大(ただし、営業費用を積極的に投下していることから、前期は4400万ユーロの営業赤字)。いまやサイトには約140万のホテルが掲載されており、世界190カ国でサービスが利用されているという。
だが、現在も1100人以上いる社員の過半数はドイツにおり、欧州のホテル情報に強いなど、欧州拠点の企業という色合いが濃い。目下、本社のあるデュッセルドルフでは2018年の竣工を目指して、3000人を収容できる新たな本社ビルを建設している。
予想とは逆の現象が起きている
今も欧州色の強い会社だが、社内文化は「シリコンバレーをドイツに持ち込んだ企業」といわれるほど、社内ヒエラルキーを極力抑え、フレキシブルな就業時間を実施するなど、ドイツ企業としては新しい存在だ。