タンザニアで迫害されるアルビノの命の歌
今回参加したアルビノのメンバーの中には、長年社会から隔離されてきた過去を乗り越えて、周囲との連帯を強める人もいた。歌とキーボードを担当した店主のリジキ・ジュリアス(40)は、妻にプロポーズしたとき妻の家族が反対し、妻は自分の肩を持ったせいで絶縁されたと明かした。「妻の家族は、家畜同然の私など、娘の夫に相応しくないと言い放った。心がズタズタになった」とジュリアスは通訳を通じて本誌に語った。
「私は音楽を愛しているし、歌うことで自分を表現できることが楽しい。今回の音楽プロジェクトで、自分たちには不可能だとあきらめていたことができた」
ブレナンの願いは、このアルバムで少しでも、アルビノに対する偏見や差別がなくなることだ。その想いを集約するのが、収録最終日となった昨年の6月13日──奇しくも国際アルビニズム啓発デーと重なった──に起きたエピソードだ。その日は地元のDJが、バンドのメンバーのためにアルバム完成を祝うコンサートを開いてくれた。するとアルビノ以外の多くの地元の子どもたちが音楽にあわせて踊り、最初はためらっていたアルビノのメンバー数人も一緒の輪に入って踊り出したのだという。
「みんな大はしゃぎで弾けまくって、1時間以上自由に気持ちよく踊ったんだ。あの瞬間、アルビノの人々を隔離してきた壁が崩れ落ちるのを見た気がしたよ」
(翻訳:河原里香)
アルバム:『ホワイト・アフリカン・パワー』(Six Degrees Records)
歌と演奏:タンザニアン・アルビニズム・コレクティブ
6月2日CD発売、ダウンロード開始
*タンザニアン・アルビニズム・コレクティブは7月27日~30日、英WOMADで演奏する予定