トランプ弾劾への道のりはまだ遠い
これはなかなか越えるのが難しいハードルだ。歴史上、これまでに下院で弾劾訴追された大統領はアンドリュー・ジャクソンとビル・クリントンの2人だけだが、2人とも上院で罷免はされず、任期を全うした。
トランプに関する著書もある歴史学者のラリー・シュワイカートは、共和党の下院議員20人が民主党に加わってトランプ弾劾に傾く可能性はあるものの、実際にそこまでの政治的リスクを冒すことは考えにくいと言う。
またアメリカ経済が好調な現状では、例え民主党が議会で多数派になっても弾劾は政治的に難しいと指摘する。
「トランプ経済の真価はまだ見えないが、好景気の中で大統領を弾劾するのは非常に困難だ。ウォーターゲート事件でも景気が悪化するまで世論はニクソンに寛大だった。もしニクソンがクリントンのような好景気を維持できれば、辞任に追い込まれることはなかっただろう」
【参考記事】私がFBI長官...じゃなく大統領報道官の後任候補です
今週、コネチカット州の沿岸警備隊学校の卒業式で祝辞を述べたトランプは、司法妨害については直接語らなかったが、メディアへの敵意をむき出しにした。「私に対する、特にメディアの最近の扱いを見てくれ。これほどひどい、不公平な扱いを受けた政治家は過去にいない。こんなことを許してはいけない」と話して、拍手喝采を浴びていた。
共和党の元下院議員で法律家でもあるデービッド・マッキントッシュは、今週開催された会合で、トランプはコミーに捜査中の事件について話し、またコミーを解任する権限を持つと語っている。「憲法上、大統領は法執行の権限を持っている......FBI長官に対してどのような捜査を行うか指示する立場にある」
また「アメリカ法律正義センター」のジョーダン・セクローは、民主党議員も今回のケースが実際には司法妨害にならないことを理解しているだろうと言う。コミーが主張するトランプ発言のメモが存在しても、「コミーの証言だけでは、検察官は立件できない」。
またセクローは、共和党が議会で多数派を占める現状で、司法妨害によって弾劾への道筋が開けたように語るのは政治闘争でしかない、と指摘する。「オバマ政権時代にも弾劾は取り沙汰されたが、そのたびに実現しない話だと説明してきている」