最新記事

フランス政治

フランス大統領選、勝者マクロンは頼りになるのか

2017年5月8日(月)17時57分
ジョシュ・ロウ

「屈しないフランス」という政治運動を率いた急進左派のジャンリュック・メランションは、第1回投票で敗退して以降も決してマクロンへの支持を表明しなかった。彼は決選投票の結果が出るとすぐにルペンの敗退を喜ぶコメントをした。マクロンについても、フランスの社会保障制度に「宣戦布告」するような「大統領君主」だと切り捨てた。

議会での戦いは、今回の大統領選と同じくらい激しくなりそうだ。

それでもルペンは強い?

ルペンと国民戦線にとって今に至るまでの道のりは長く、その過程で党内の亀裂も生まれた。

2011年に党首の座に就いて以来、ルペンは古臭い極右の党というイメージを振り捨てるため、国民戦線のイメージ刷新に精力的に取り組んだ。党内から反ユダヤ主義的な発言を締め出し、反移民の訴えと同じくらい声を大にして、大きな政府による経済政策を推進すると強調した。

だがすべての党員がルペンの手法を支持したわけではない。日曜のルペンの得票率は、2002年大統領選の決選投票で父親のジャンマリ・ルペンが獲得した17.8%の得票率の2倍には僅かに届かなかった。国民戦線は今後、ルペンの路線の正しさを証明できるほど、今回の得票率が高い数字か否かを見極める必要がある。

党内でルペンに異を唱える代表格が、姪のマリオン・マンシャル・ルペンだ。彼女は敬虔なカトリック教徒で、政府主導の経済政策よりも保守的な価値観により重点を置く。

日曜に仏テレビ局「フランス2」の番組に出演したマリオンは、大統領選から「教訓を学んだ」と述べ、党が唱えるユーロ離脱の実現可能性について、有権者を説得しきれなかった点を敗因の一つに挙げた。彼女は今後、党の現行路線に対して一層批判を強める可能性がある。

白けた有権者

フランスは伝統的に、自国の民主主義に熱心な国だ。投票日になると、アメリカを凌ぐ割合の有権者が投票に行く。大統領選となれば、投票率80%台というのが当たり前だ。

だから日曜の投票率の低さは衝撃的だ。世論調査会社イプソスが予測した今回の投票率は74%で、1969年以来最も低い。

しかも投票所に現れた有権者も皆が皆、熱狂していたわけではない。イプソスによると、マクロンに投票した有権者の43%は、ルペンの大統領選出を阻止するためだけに投票したという。

マクロンは勝利演説でその点も認めた。「実際に我々の考え方を信じていなくても票を託してくれたすべての国民」に語りかけ、それが正しい選択だったと確信させてみせると約束した。一方で明確な計画は示さず、「フランスを守るためにやらなければならないことをすべてやる」と誓うのみだった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は続伸、日米交渉通過で安心感 海外休場のた

ワールド

ウクライナ第2の都市にミサイル攻撃、1人死亡・57

ビジネス

ENEOS、発行済み株式の10.8%に当たる自社株

ビジネス

午後3時のドルは142円前半でこう着、不透明感強く
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判もなく中米の監禁センターに送られ、間違いとわかっても帰還は望めない
  • 3
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、アメリカ国内では批判が盛り上がらないのか?
  • 4
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 5
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 6
    ノーベル賞作家のハン・ガン氏が3回読んだ美学者の…
  • 7
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 10
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 7
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中