フランス大統領選、勝者マクロンは頼りになるのか
「屈しないフランス」という政治運動を率いた急進左派のジャンリュック・メランションは、第1回投票で敗退して以降も決してマクロンへの支持を表明しなかった。彼は決選投票の結果が出るとすぐにルペンの敗退を喜ぶコメントをした。マクロンについても、フランスの社会保障制度に「宣戦布告」するような「大統領君主」だと切り捨てた。
議会での戦いは、今回の大統領選と同じくらい激しくなりそうだ。
それでもルペンは強い?
ルペンと国民戦線にとって今に至るまでの道のりは長く、その過程で党内の亀裂も生まれた。
2011年に党首の座に就いて以来、ルペンは古臭い極右の党というイメージを振り捨てるため、国民戦線のイメージ刷新に精力的に取り組んだ。党内から反ユダヤ主義的な発言を締め出し、反移民の訴えと同じくらい声を大にして、大きな政府による経済政策を推進すると強調した。
だがすべての党員がルペンの手法を支持したわけではない。日曜のルペンの得票率は、2002年大統領選の決選投票で父親のジャンマリ・ルペンが獲得した17.8%の得票率の2倍には僅かに届かなかった。国民戦線は今後、ルペンの路線の正しさを証明できるほど、今回の得票率が高い数字か否かを見極める必要がある。
党内でルペンに異を唱える代表格が、姪のマリオン・マンシャル・ルペンだ。彼女は敬虔なカトリック教徒で、政府主導の経済政策よりも保守的な価値観により重点を置く。
日曜に仏テレビ局「フランス2」の番組に出演したマリオンは、大統領選から「教訓を学んだ」と述べ、党が唱えるユーロ離脱の実現可能性について、有権者を説得しきれなかった点を敗因の一つに挙げた。彼女は今後、党の現行路線に対して一層批判を強める可能性がある。
白けた有権者
フランスは伝統的に、自国の民主主義に熱心な国だ。投票日になると、アメリカを凌ぐ割合の有権者が投票に行く。大統領選となれば、投票率80%台というのが当たり前だ。
だから日曜の投票率の低さは衝撃的だ。世論調査会社イプソスが予測した今回の投票率は74%で、1969年以来最も低い。
しかも投票所に現れた有権者も皆が皆、熱狂していたわけではない。イプソスによると、マクロンに投票した有権者の43%は、ルペンの大統領選出を阻止するためだけに投票したという。
マクロンは勝利演説でその点も認めた。「実際に我々の考え方を信じていなくても票を託してくれたすべての国民」に語りかけ、それが正しい選択だったと確信させてみせると約束した。一方で明確な計画は示さず、「フランスを守るためにやらなければならないことをすべてやる」と誓うのみだった。