フランス大統領選、勝者マクロンは頼りになるのか
パリのルーブル美術館の近くで勝利を祝うマクロンと支持者 Thomas Samson-REUTERS
<極右ルペンがフランスの大統領になるという悪夢は避けられた。では、ルペンを大差で破った中道右派のマクロンとは何者で、フランスとEUをどうするつもりか>
フランス大統領選の決選投票が日曜にあり、中道のエマニュエル・マクロン元経済産業デジタル相が極右政党・国民戦線のマリーヌ・ルペン候補に圧勝。リベラルな社会と国際協調を重視する政策が、孤立主義や排外主義を掲げる極右を退けた。
仏内務省の集計(開票率99%)によると、マクロンの得票率は65%、ルペンは35%だった。
世界が固唾をのんで見守ったフランス大統領選は終わったが、今後フランスはどうなるのか。このマクロンの圧勝は何を意味しているのだろうか。
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本当の戦いはこれから
昨年はイギリスが国民投票でまさかのEU離脱を決め、アメリカの大統領選でも泡沫候補と思われていたドナルド・トランプが勝利した衝撃から、今回の仏大統領選でも何が起こってもおかしくない、という緊張感があった。事前の世論調査でいくらマクロンの優勢が伝わっていても、なかなか信じるのは難しかった。
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だが実際は第1回投票が終わった時点で、中道右派のマクロンが大統領に選ばれる見通しは疑いようがなかった。彼が率いる政治運動「アン・マルシュ(前進!)」の支持者はずっと前から、本当に厳しい戦いの舞台は6月11日と18日に行われる国民議会(下院)選挙になると覚悟していた。
仏大統領の権限の多くは議会で首相の支持を必要とする。しかも首相の任命は大統領の政党単独で国民議会の過半数の支持を得られなければ、連立を組むしかない。マクロンが1年前に立ち上げたばかりの「前進!」は現有議席がゼロ。それが今や、国民議会定数577議席のうち過半数の289議席を占める必要がある。
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マクロンはそれが不可能に近いことを認めており、勝利演説の中で「真の多数派、強い多数派、変革のための多数派」を築くと誓った。
だがマクロンに敗れた対立候補たちも、そうした事情を心得ている。
中道右派の最大野党・共和党はフランソワ・フィヨンを大統領候補に選出したものの、選挙戦では妻子の架空雇用疑惑が足かせとなり、決選投票に進めなかった。フィヨンは、6月の国民議会選挙に向けた党内の指導的立場から退く意思を表明。けじめがついたと見るや、共和党はすぐさま国民戦線に対抗するホームページを立ち上げて存在感を見せた。