日本はAIIBに参加すべきではない--中国の巨大化に手を貸すな!
こうして日本は中国に「洗脳」され続けては、中国を支援し、今では「友好」の名のもとに中国に「頭を下げて」、日本の国益を決定的に損ねる道を歩むことを、今もやめようとしていない。
それがAIIBへの参加であり、一帯一路への協賛なのである。
「中華帝国」の夢
このたびの一帯一路サミットで、習近平国家主席は「中国は決して思想や政治体制を輸出しないし、内政干渉をしない」という主旨のスピーチをしている。
本当だろうか?
たとえばモンゴルの場合。
仏教徒の多いモンゴルは昨年、ダライ・ラマ14世を招聘した。中国は抗議し、もしダライ・ラマを選ぶのなら、一帯一路には参加するなと脅しをかけてきた。
モンゴルは、チャイナ・マネーを選んだ。思想、精神文化の自由を犠牲にして、中国の思惑を選んだのである。
フィリピンのドゥテルテ大統領は4月末、トランプ大統領と電話会談した際に、トランプ大統領から「ホワイトハウスに来ないか」と訪米の誘いを受けた。しかしドゥテルテ大統領は「他国の訪問など、忙しくて」ということを理由に訪米を断っている。そして北京詣でをして一帯一路サミットに参加し、習近平国家主席と首脳会談を行ったのだ。
その前に開催されたASEAN首脳会議の共同声明から南シナ海問題をドゥテルテ大統領は削除させ、朝鮮半島情勢に関してのみ「ASEANは深く懸念している」とした。そして中国同様、北朝鮮とアメリカの軍事的緊張を緩和すべきだと記者会見で述べている。
このように、有形無形の圧力を中国は関係国にかけ、やがて「中国の思想」に染まった「中華帝国」を築いていく夢を実現させる野心を潜ませているのである。
一帯一路構想は「文化」が重要と、中国
CCTVでは連日、一帯一路特集番組を組んできたが、その中で「鉄道、道路、空港、港、パイプライン」などのハード面も大切だが、最も重要なのは「文化」「精神」といったソフトパワーだと断言している。ソフトパワーは「戦わずして勝つことのできる最強の武器」とも強調。
日本人は今、北朝鮮の横暴さのお蔭で、まるで中国が常識的で平和的であるかのような錯覚を覚えているかもしれないが、ノーベル平和賞受賞者の劉暁波はいま監獄の中にいることを忘れてはならないし、「中国は開放的だ」というその言葉の下で、Great Fire Wall(万里の防火壁)という、外部の民主的情報を「有害情報」として遮断する情報の国家的壁があることを忘れてはならない。
筆者が老体に鞭打ちながら、こうしてコラムを書き発信し続けるのは、筆者が書いた自らの体験である長春封鎖の事実(『チャーズ 中国建国の残火』)を、中国が絶対に認めようとしないからである。
日本がAIIBなどに参加したら、ただひたすら戻ってこないお金(日本国民の血税!)を中国のために注ぎ続け、中国を巨大化させることに貢献するだけで、日本国民にとっては、百害あって一利なしと心得るべきだろう。筆者は反対だ。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。