最新記事

中国

日本はAIIBに参加すべきではない--中国の巨大化に手を貸すな!

2017年5月17日(水)15時15分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

こうして日本は中国に「洗脳」され続けては、中国を支援し、今では「友好」の名のもとに中国に「頭を下げて」、日本の国益を決定的に損ねる道を歩むことを、今もやめようとしていない。

それがAIIBへの参加であり、一帯一路への協賛なのである。

「中華帝国」の夢

このたびの一帯一路サミットで、習近平国家主席は「中国は決して思想や政治体制を輸出しないし、内政干渉をしない」という主旨のスピーチをしている。

本当だろうか?

たとえばモンゴルの場合。

仏教徒の多いモンゴルは昨年、ダライ・ラマ14世を招聘した。中国は抗議し、もしダライ・ラマを選ぶのなら、一帯一路には参加するなと脅しをかけてきた。

モンゴルは、チャイナ・マネーを選んだ。思想、精神文化の自由を犠牲にして、中国の思惑を選んだのである。

フィリピンのドゥテルテ大統領は4月末、トランプ大統領と電話会談した際に、トランプ大統領から「ホワイトハウスに来ないか」と訪米の誘いを受けた。しかしドゥテルテ大統領は「他国の訪問など、忙しくて」ということを理由に訪米を断っている。そして北京詣でをして一帯一路サミットに参加し、習近平国家主席と首脳会談を行ったのだ。

その前に開催されたASEAN首脳会議の共同声明から南シナ海問題をドゥテルテ大統領は削除させ、朝鮮半島情勢に関してのみ「ASEANは深く懸念している」とした。そして中国同様、北朝鮮とアメリカの軍事的緊張を緩和すべきだと記者会見で述べている。

このように、有形無形の圧力を中国は関係国にかけ、やがて「中国の思想」に染まった「中華帝国」を築いていく夢を実現させる野心を潜ませているのである。

一帯一路構想は「文化」が重要と、中国

CCTVでは連日、一帯一路特集番組を組んできたが、その中で「鉄道、道路、空港、港、パイプライン」などのハード面も大切だが、最も重要なのは「文化」「精神」といったソフトパワーだと断言している。ソフトパワーは「戦わずして勝つことのできる最強の武器」とも強調。

日本人は今、北朝鮮の横暴さのお蔭で、まるで中国が常識的で平和的であるかのような錯覚を覚えているかもしれないが、ノーベル平和賞受賞者の劉暁波はいま監獄の中にいることを忘れてはならないし、「中国は開放的だ」というその言葉の下で、Great Fire Wall(万里の防火壁)という、外部の民主的情報を「有害情報」として遮断する情報の国家的壁があることを忘れてはならない。

筆者が老体に鞭打ちながら、こうしてコラムを書き発信し続けるのは、筆者が書いた自らの体験である長春封鎖の事実(『チャーズ 中国建国の残火』)を、中国が絶対に認めようとしないからである。

日本がAIIBなどに参加したら、ただひたすら戻ってこないお金(日本国民の血税!)を中国のために注ぎ続け、中国を巨大化させることに貢献するだけで、日本国民にとっては、百害あって一利なしと心得るべきだろう。筆者は反対だ。


endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中