最新記事

中国

日本はAIIBに参加すべきではない--中国の巨大化に手を貸すな!

2017年5月17日(水)15時15分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

一帯一路とAIIBは、中国の「新植民地化政策」以外の何ものでもない。

習近平政権の国家スローガン「中華民族の偉大なる復興」とは

習近平政権の国家スローガンは、「中華民族の偉大なる復興」と「中国の夢」。

「偉大なる復興」は「アヘン戦争をきっかけに列強諸国により中国は植民地化されたが、これからは中国の時代。その復讐をして、今度は中国が経済的に植民地化してやる」という心を内に秘めている。

それが如実に表れているのが、この「99年間」という数値なのである。これは新たな形の「租借」で、これらを拠点に中国は港を軍港化し、中国の安全保障を確保していく野心を「美辞麗句」の下に隠しているのである。

そのことを明確に認識しているインドは、このたびの一帯一路サミットに代表を送らなかった。中国が「真珠の首飾り」と称されている安全保障(=軍事)戦略を、一帯一路の「海の新シルクロード」に含ませていることを、インドは見抜いているからだ。

「真珠の首飾り」とは、香港からポートスーダンまで延びる中国の海上交通路戦略で、パキスタン、スリランカ、バングラデシュなどインド用を経由して、モルディブ、ソマリアなどを通り、マラッカ海峡、ホルムズ海峡などへと触手を伸ばす中国の海路戦略だ。

この海路戦略は、「経済の名のもとの軍事戦略」以外の何ものでもない。

日本がAIIBや一帯一路に参加することは、すなわち中国の世界制覇に手を貸すことなのである。

日本はいったい、何度失敗すれば気が済むのだろう。

毛沢東は日本軍を利用して中共軍を巨大化させた

拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』にも書いたように、中国共産党の毛沢東は、日中戦争における日本軍を利用して中国共産党を巨大化させ、中共軍を強力なものにしていった。だから毛沢東は「皇軍に感謝する」と何度も言ってきたのである。これを「毛沢東流のユーモア」と解釈させる中国に共鳴する日本人が多いことは、実に残念だ。

中国共産党の洗脳が、どれだけうまいか、気づくべきである。

1972年に日中国交正常化した後に中国に対して経済支援を続けてきたのは、やむを得ないことではあれ、敗戦に伴う戦争賠償金を支払って、戦後処理を終わりにすべきだった。

しかし老獪(ろうかい)な毛沢東は賠償金を断って、未来永劫に日本から経済支援を受ける手段の方を選んだ。結果、日本はODA支援を続けてきたし、天安門事件(1989年6月4日)により西側諸国の経済封鎖を、いの一番に解いて、中国への経済支援を主導していったのである。1992年の天皇陛下訪中は中国(江沢民政権)からの強い要望によるもので、中国は「天皇が訪中してくれさえすれば、過去のことは一切問題にしない」と約束した。 

しかし、どうかだったか?

天皇陛下訪中を見た西側諸国は経済封鎖を解き、アメリカなどは、むしろ非常に積極的に中国への経済支援に邁進した。そうすれば、やがて中国が民主化するだろうなどという、あり得ない期待をしていたからだ。

その結果、2010年には中国のGDP規模は日本を凌駕し、日本への「歴史カード」を、これでもかとばかりに突き付けてくるようになる。

日米ともに、まんまと中国の長期戦略の罠に嵌ったのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英消費者信頼感、11月は3カ月ぶり高水準 消費意欲

ワールド

トランプ氏、米学校選択制を拡大へ 私学奨学金への税

ワールド

ブラジル前大統領らにクーデター計画容疑、連邦警察が

ビジネス

カナダ、63億加ドルの物価高対策発表 25年総選挙
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中