最新記事

朝鮮半島

フランス海軍艦艇が佐世保入港、日米英と訓練 北朝鮮をけん制

2017年4月29日(土)20時15分

 4月29日、フランス海軍の艦艇「ミストラル」(写真)が、長崎県の海上自衛隊佐世保基地に入港した(2017年 ロイター/Nobuhiro Kubo)

フランス海軍の艦艇が29日、長崎県の海上自衛隊佐世保基地に入港した。このあと日本、英国、米国の部隊を乗せ、4カ国で共同訓練をしながら米領グアムへ向かう。南シナ海や朝鮮半島問題でアジア太平洋地域の緊張が高まる中、日米だけでなく、欧州諸国もこの地域に強い関心があることを示し、4カ国で中国や北朝鮮をけん制する狙いがある。

強襲揚陸艦「ミストラル」は2月末にフランスを出港。英軍の部隊約60人とヘリコプター2機が同乗し、ベトナムなどに寄港した後、29日朝に佐世保基地に到着した。折しも北朝鮮が弾道ミサイルを新たに発射し、東アジア情勢が緊迫化した数時間後の入港となった。

東京から駆け付けたダナ仏駐日大使は、ミストラルのブリッジで記者団に対し、「佐世保の寄港初日に北朝鮮がミサイルを発射するとは思っていなかった。成功にせよ、失敗にせよ、許せない行為に変わりはない」と語った。その上で、「法律の順守、平和、地域の安定を重視するこの4カ国が連携することで、北朝鮮に対処する姿勢を見せることになる」と述べた。

ミストラルは5月5日に佐世保を出港する。新たに日米の水陸両用部隊と、自衛隊のヘリコプター1機が乗り込む。海上自衛隊の輸送艦「くにさき」が途中まで同行し、日本周辺の海域で共同訓練を実施する。

さらにグアムに到着後、陸上に部隊を送り込む能力を持つミストラルを中心に、自衛隊の水陸両用部隊、米英の海兵隊、日英のヘリコプターが共同で上陸訓練を実施する。4カ国の共同訓練は初。総勢700人が参加する。

佐世保基地に上陸したドゥシャリジェール艦長は、同市の子供たちが出迎える中、「ともに手を携えて訓練を実施することで、相互の(部隊の)運用性を高めることを信じている」と語った。

訓練は表向き特定の対象国を念頭に置いたものではないが、4カ国とも、岩礁を埋め立てるなどする中国と、国連安保理決議を無視して核とミサイルを開発を進める北朝鮮を警戒している。自衛隊関係者は「航行の自由や、法の支配という理念を共有した国々が一緒に訓練をすることに意味がある」と言う。「船の訓練だけでなく、着上陸というのは中国への強いメッセージになる」と話す。

フランスはインド洋のレユニオン島や南大平洋のニューカレドニアなどを領有し、排他的経済水域(EEZ)の8割以上をアジア大平洋地域に持つ。ここ数年、艦隊をインド洋や太平洋に派遣するなど、アジア地域への関与を強めつつある。英国も昨年10月に日本へ初めて戦闘機を派遣し、同地域に関心を向けている。

日米はこのほか、北朝鮮への圧力を強めるため、米海軍の空母カール・ビンソンと海上自衛隊の護衛艦が4月23日から東シナ海で共同訓練を実施した。海自広報部によると、日米の艦隊は29日に対馬海峡を通過したところで訓練を終了した。4月上旬にシンガポールから朝鮮半島近海に向けて派遣されたカール・ビンソンは、日本海に入った。

(久保信博※)



[佐世保市 29日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

野村HD、バンキング部門を新設 資産形成や資産承継

ビジネス

リクルートHD、4500億円上限に自社株買い M&

ビジネス

イオン、イオンモールとディライトを完全子会社化

ワールド

中国実弾演習、民間機パイロットが知ったのは飛行中 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:破壊王マスク
特集:破壊王マスク
2025年3月 4日号(2/26発売)

「政府効率化省」トップとして米政府機関に大ナタ。イーロン・マスクは救世主か、破壊神か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 3
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身のテック人材が流出、連名で抗議の辞職
  • 4
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 5
    日本の大学「中国人急増」の、日本人が知らない深刻…
  • 6
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 7
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 8
    老化は生まれる前から始まっていた...「スーパーエイ…
  • 9
    【クイズ】アメリカで2番目に「人口が多い」都市はど…
  • 10
    令和コメ騒動、日本の家庭で日本米が食べられなくな…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 3
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映…
  • 6
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 7
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 8
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中