知っておきたい、インサイダー取引になる場合・ならない場合
1.会社関係者等や第一情報受領者【内部者】
■会社関係者等
「会社関係者等」とは、「会社関係者」と「過去に会社関係者だった人」を含みます。インサイダー取引に一歩近づく会社関係者は、次の範囲です。派遣社員もアルバイトも、取引先もNGです。
・(役員)取締役・監査役・会計参与・執行役など
・(従業員)従業員・契約社員・派遣社員・アルバイトなど
・(契約締結者)取引先・取引銀行・顧問弁護士・会計士・税理士・M&Aコンサルタントなど
・(法令に基づく権限がある人)その会社の監督官庁にいる公務員
・総株式の3%以上を保有する大株主
そして、「過去に会社関係者だった人」とは、その会社の役員や従業員を「辞めてから1年以内」の人に限定されます。辞職1年が経過して以降は、もはや内部者ではなく一般人の投資家と同じ立場だと考えて、インサイダー取引の規制から外すのです。
■第一情報受領者
「第一情報受領者」とは、情報を持っている会社関係者などから、重要事実(インサイダー情報)を見たり聞いたりして受け取った人です。社内の休憩室や飲み屋で小耳に挟んだ情報には注意が必要です。
インサイダー取引に一歩近づく例
・会社の中で、インサイダー情報を含む資料を見てしまった
・会社の中で、インサイダー情報を含む会話を立ち聞きしてしまった
・プライベートの居酒屋での会話で、インサイダー情報を聞いてしまった
・会社を取材している経済記者
2.上場会社等に関する【株式の発行元】
ここでは「等」がポイントです。東証やマザーズなどの証券取引所に上場されている企業プラス、それに関連する一定の企業をいいます。子会社の従業員の方など、案外「親会社とは関係ないから大丈夫」と思ってしまいがちですが、実はNGです。
インサイダー取引に一歩近づく例
・上場会社の子会社
・特定関係法人(スポンサー)
・不動産投資信託(REIT)を発行する投資法人
3.重要事実【インサイダー情報】
株価の上昇や下落に関わるような出来事を「重要事実」といいます。これが、いわゆる「インサイダー情報」で、「決定事実」「発生事実」「決算情報」「(その他)バスケット条項」に分類されます。
■決定事実
株価に変動が生じてもおかしくないほど重要な企業イベントが決定したことを指します。株主総会や取締役会だけでなく、相応の社内決定機関が決定したものも含みますし、前段階の調査や交渉が決定した場合も広く含むことがあります。
インサイダー取引に一歩近づく例
・株式募集
・業務提携
・合併
・会社分割
・新製品の企業化
・剰余金の配当
■発生事実
会社の方針と関係なく起きてしまった、会社にとっての重大な出来事をいいます。株価が変動しておかしくないほどの大イベントであれば、会社にとって良いことも悪いことも含みます。
インサイダー取引に一歩近づく例
・稼働中の工場が火災によって焼失した
・裁判で敗訴して、多額の損害賠償を支払うことになった
・主要取引先との取引が停止した
・親会社が破産開始手続を行った
・主要株主の異動(全議決権の10%以上を保有する株主が誕生した。あるいは大量売却によって主要株主でなくなった)
・債権者によって債務が免除された
■決算情報
会社の業績予想が修正(下方修正・上方修正)される情報です。
■バスケット条項事実
その他、投資判断に影響を与える重要事実と考えられるものです。ただ、バスケット条項事実は基準として不明確なので、インサイダー取引のOKとNGの境界線が、ますますボンヤリしてしまうと批判されることがあります。
インサイダー取引に一歩近づく例
・カリスマ社長の退任
・多数の架空売上
・多額の営業資金不足
・株主優待の廃止(多くの株主があてにしている場合)
・新薬の重篤な副作用
・不正が発覚して当局から調査が入っているが、まだ表沙汰になっていない
■軽微基準
以上4つの重要事実に一見すると該当しそうだけれども、株価には影響しないほど小規模なものは、インサイダー取引の対象となる重要事実からは外します。たとえば株式募集は「決定事項」ですが、その募集によって会社へ払い込まれる総額が1億円未満と見込まれる場合などは、重要事実に含めません。