「メイド・イン・アメリカ」 価格競争で労働者をロボットに置き換え
モンスター・モトの場合、バイクを1台249─749ドルで販売しているが、価格に敏感な客がより安い中国製のライバル製品に流れることを恐れ、値上げには踏み切れないと同社のCEOは語る。
「箱に『メイド・イン・アメリカ』と書いてあれば、消費者が(値上げの)フリーパスをくれる訳ではない」と同CEOは言う。「価格競争力を維持しなければならない」
工場の労働コストに目を光らせることは、米国の製造業者にもコントロールできることだ。彼らは、組み立てラインで働く、主に低スキルな労働者をロボットに置き換えることが、米国で生産しつつ、コスト競争力を保ち、商業的に成功する唯一の道だと考えている。
これはトランプ氏が大統領選で勝つために使った説明とは、真逆の傾向だ。
大統領就任後も、トランプ氏は過ぎ去ったアメリカ製造業の栄光を復活させ、数百万の雇用を再創出する公約を掲げ続けている。大統領は先月31日、「アメリカの繁栄泥棒」に終止符を打つため、貿易ルールを悪用する国の取り締まりを強化するよう、政権に指示した。
だがモンスター・モトのような企業の製造現場では、状況はより複雑だ。
「まるで人々は、製造拠点を地球上のどこかからプラグの様に引き抜き、米国に差し込んでも、万事支障ないと考えているかのようだ」。貨物輸送大手ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)のデビッド・アブニーCEOはそう語る。
UPSは、モンスター・モトが中国製部品をラストンに輸送できるようサプライ・チェーンの再構築を手助けした。「(製造拠点の米国移転は)すぐに実現できることではない」
トランプ政権による製造業の国内回帰に向けた取り組みは、規制緩和と製造業労働者に新たなスキルを学ばせるプログラムの拡充に重点を置く、とホワイトハウスの高官は説明する。
「米国に回帰する製造業の雇用が、前に出て行ったものと全く同じにはならないだろうことは承知している」と同高官は語る。「われわれは、アメリカの労働者が対応できるよう手段を取っている」