最新記事

エリート社会

中国はなぜイバンカ・トランプに夢中なのか

2017年4月19日(水)21時30分
レベッカ・カール(米ニューヨーク大学歴史学教授)他

リンダ・ジェビン(作家

権力者の前でかわいい女の子が演じるのは中国の広報、プロパガンダ、外交の常套手段だ。ある中国の友人は、小学生のころしょっちゅう北京の国際空港に呼び出されていた。そこには数百人のかわいい愛国者が集まっていて、花束を持って外国からの賓客を歓迎した。幼稚園の子供たちも、振付のついた歌と踊りを軍事パレード並みの正確さで披露し、かわいらしさでお客様を魅了した。

中国研究家ローラ・ポッジが著書『中国の子供たちよ立ち上がれ!』で書いた100年前の中華民国では、ダーウィンの『進化論』に影響を受けた中国の知識人の間で後から生まれる者ほど価値があると信じられ、子供こそ国家の進歩の希望ともてはやされた。当時の映画もテレビも、思春期前で無垢でかわいい子供の作品でいっぱいだ。今の子供用品にかわいらしいものが多いのも、子供を「母なる大地」の象徴とする信仰を裏付けている。

アラベラも夢に見る中国

アラベラ・クシュナーは、子供を国家発展の希望と崇める中国の子供信仰の西洋人版だ。かわいらしく飾り立てられた青い目のお人形がどこか退屈そうにしていると、嘘がなくていっそう純真で魅力的に見える。彼女がたどたどしく漢詩をそらんじ、党幹部が好みそうな歌を歌うと、中国人はまるで自分が褒められたように感じる。最も反中的なアメリカ大統領の孫娘さえが中国に未来を見ているのだ、と。

そしてイバンカ・トランプは生まれながらのブランドだ。彼女がインスタグラムやツイッターに投稿するアラベラの姿に、中国人は人類の次の進化段階のビジョンを見る。生まれながらにして中国文明の優越性を理解し、中国語で歌って踊る西洋の子供は中国の未来であり、将来の顧客としてまた投資家として、富の源泉でもある。アラベラへの称賛は、祖父のトランプに向けられるはずだった嫌悪や怒りをかき消した。アラベラの助けを借りて、イバンカはまた、トランプに金メッキを施すことに成功したのだ。

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米フォード、SUVなどの対中輸出停止 高関税受け

ビジネス

マグニフィセント7決算発表開始、テスラなど=今週の

ワールド

イスラエル首相「勝利まで戦う」、ハマスへの圧力強化

ワールド

対米関税交渉、日本が世界のモデルに 適切な時期に訪
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボランティアが、職員たちにもたらした「学び」
  • 3
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投稿した写真が「嫌な予感しかしない」と話題
  • 4
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 5
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 6
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 7
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 8
    ロシア軍、「大規模部隊による攻撃」に戦術転換...数…
  • 9
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 10
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 9
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中