フランス大統領選、新労働スタイル「ギグ・エコノミー」が争点に
新規雇用の立役者
フランスは労働者の権利が伝統的な雇用契約で手厚く守られていることで知られる。労働時間は週35時間に抑えられ、解雇は難しい。
だからこそ雇用主は正規採用を尻込みし、慢性的な高失業率という代償を払っているのだとの批判もある。10%というフランスの失業率は、ドイツや英国のおよそ2倍に上る。特に若者層は4人に1人は職がない状態に近づきつつあり、バンリューに多く住む移民も国内に溶け込ませられない。
しかしギグ・エコノミーがこの状況を変えつつある。
現在フランスで個人事業主として110万人が登録されている。実際に活動しているのは64万3800人で、労働力人口の約2900万人(失業者数は350万人)のごく一部にすぎない。それでもボストン・コンサルティング・グループがウーバーの委託で実施した調査によると、パリ地域では昨年前半、ウーバーなど配車サービス業界、いわゆる「VTCセクター」だけで新規雇用総数の25%を生み出した。地方はパリほどウーバーの事業が活発でないが、フランス全体でも新規雇用総数の15%を同セクターが占めた。
皮肉なことに英米に比べてフランスは規制が厳しい分、逆に配車サービスは成長余地が大きい。昨年段階では、住民1000人当たりのタクシーとVTC運転手の数はロンドンが12人、ニューヨークは17人だがパリはたった5.6人だ。夜中にタクシー会社に電話して車を呼ぼうとすれば一苦労だが、パリ以外の地域では苦労がさらに大きくなるだろう。
ボストン・コンサルティングは、パリがロンドンないしニューヨーク並みの運転手数に向かうとすれば、2022年までにほぼ6万人の追加雇用が生まれる可能性があると試算した。
宅配サービスの成長も著しく、デリバルー幹部によると、昨年のフランスにおける売上高は650%増と他の欧州市場を上回った。