従業員のスカーフ禁止容認判決で、イスラムと欧州の対立深まる
中道右派のフランス大統領候補で、『Conquering Islamic Terrorism(イスラム系テロリズムの打破)』の著者でもあるフランソワ・フィヨンは今回の判決について、「欧州社会全体の融和と平和に貢献するものだ」と称えている。
その一方で、テロの専門家からは、今回の判決により過激派が勢いづくおそれがあるとの指摘も出ている。欧州在住イスラム教徒の孤立感を強め、聖戦主義者に勧誘の糸口を与える可能性があるためだ。
「スカーフやブルカの禁止や入国制限は、過激派組織を利するだけだ。彼らのプロパガンダや勧誘の活動を勢いづかせることになる」。ハーグ戦略研究センターのアナリスト、レニエル・ベルジェマは本誌にそう語っている。
フランス極右も反対
EUにとっては厄介な話だが、スカーフをめぐる論争は、フランスの極右政党「国民戦線」にも利用されている。国民戦線のマリーヌ・ルペン党首は、路上で礼拝するイスラム教徒を、ナチスによるフランス占領に喩えたことがある。
さらに2017年2月のレバノン訪問中には、イスラム宗教指導者との会談時にスカーフ着用を求められるとこれを拒否し、会談をキャンセルしている。
イスラム教以外の宗教指導者も、特定の宗教に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)が増加している欧州の現状を指摘し、今回の判決は宗教差別を煽るだけだと述べている。ユダヤ教指導者で構成される欧州ラビ評議会のピンカス・ゴールドシュミット会長は、「今回の判決や人種差別的な事件を見る限り、欧州が発しているメッセージは明らかだ。異教徒はもはや歓迎されない」と語り、宗教的少数派を孤立させてはならないと警告を発した。
スカーフの判決により孤立がさらに深まることになるのか、先行きはまだ不透明だ。