極右政治家ウィルダースはオランダをどう変えるか
すでにオランダでも、ポピュリズムの圧力に対抗する一部の主流派の政党が、率先して右寄りの政策を掲げ始めた。最近は現政権で第1党の中道右派政党、自由民主党(VVD)が、ウィルダースと同じような主張を展開した。もともとはリベラルな指導者だったマルク・ルッテ首相は1月、「普通に振る舞え、さもなければ出ていけ」と移民に警告する選挙用広告を出した。ヨーロッパ諸国の政党の政策的立場を分析する「マニフェスト・プロジェクト」によれば、政治思想の左右度を測る独自のスケールで、2000年以降に自由民主党は約10ポイントも右寄りになった。
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ウィルダースが総選挙で目標の最多得票を獲得できるかどうかはまだわからない。支持率はトップでもリードが縮小しているうえ、自由党は実際の選挙になると得票数が伸び悩む傾向がある。2012年の総選挙と2014年の欧州議会選挙でも、世論調査の予想より悪い結果だった。
だがいずれにしても、ウィルダースは影響力を強める公算が高いと、英ケンブリッジ大学のレオニー・デヨングは指摘する。ウィルダースの前の世代のポピュリストで、2002年に暗殺された右派政治家ピム・フォルタインが台頭できたのは、当時の右派と左派が入り混じる「紫色の連立政権」が、政権内の意見対立で何も決められず無能だったから。左派から中道右派まで4、5つの政党を寄せ集めて誕生する新政権も、当時と同様何もできないごた混ぜになる可能性がある。
「ウィルダースが主流派からのけ者にされれば、エリート政治家は国民の意思を無視しているという彼の主張を勢いづけるだけだ」とデヨングは言った。「そうなれば、彼は負けない」