ウーバーはなぜシリコンバレー最悪の倒産になりかねないか
アメリカは中国に負けてばかり、というのはトランプの口癖だが、ウーバーは準備不足のまま中国市場に参入し、トランプの正しさを証明した。昨夏、ウーバーは中国の配車サービス最大手「滴滴出行」との合弁事業から事実上撤退した。これを機に、世界市場でも滴滴出行がウーバーを追い落とすことになるかもしれない。もしアメリカのユーザーが外出時に「ウーバーする」のではなく「滴滴する」というフレーズを使い始めれば、トランプは発作を起こすだろう。
苦境に追い打ちをかけるのが、ウーバーの財政事情だ。ウーバーは未公開企業だが、経営状態を示す数字がいくつか流出している。ブルームバーグは同社が2016年の第3四半期に8億ドルの損失を計上したと報道した。去年1年間の損失は30億ドルに上ったという憶測も飛ぶ。
IPOを拒む真の理由
ウーバーのビジネスモデルを維持するには、とにかくコストがかかる。より多くのユーザーに利用してもらうには、運転手を多数確保して、多額の報酬を払う必要があるからだ。大量生産でコストを削減するという、規模の経済はここでは通用しない。リフトやタクシーなどとの競争にさらされているため、料金を上げる力もほとんどない。それにもかかわらず、投資家から資金を募るたびに株価は上がり、時価総額は700億ドル近くに達している。既にゼネラル・モーターズ(GM)の時価総額を上回る。誰が見ても過剰評価だろう。
天を突く時価総額は、ウーバーの首を絞める可能性がある。創立8年目のウーバーは、多くのITベンチャーがIPO(新規株式公開)を行う時期にさしかかっている。それにもかかわらず、カラニックが頑なに株式公開を拒んでいるのは有名な話だ。
彼はまるで市場を必要としない異端児のように振る舞うが、本当の理由は、今のウーバーの財務状況でIPOを行っても既存の投資家に損をさせない高い株価が付かないからだとも言われる。もしそれが事実なら、ウーバーは窮地だ。小学校6年生レベルの算数ができる人なら誰でも、投資してもらうのは不可能だ。
時間を稼ぐにしても、救ってくれる忠実な顧客層はいない。顧客はウーバーでなければならない、というこだわりを持っていないからだ。ウーバーには得意客への割引制度も支持すべき社会的な価値もない。顧客と運転手の間に絆が生まれることは好まない。ウーバーの常連だからといって誇りを持てるわけでもない。
希望する価格で目的地まで連れて行ってくれる限り、人々はウーバーを利用するだろう。だがもっと良質なサービスや低料金を掲げる事業者が現れれば、さっさと乗り換えるはずだ。