オランダのパラドックス、豊かな国で極右政党台頭の理由
3月3日、経済が順調にもかかわらず、有権者は主流派に背を向け、反主流派的なポピュリズムに賛同しているのだ。この傾向が特に顕著なのがオランダだ。写真は総選挙を15日に控えたオランダ首都アムステルダムで、張り出された候補者のポスター。1日撮影(2017年 ロイター/Michael Kooren)
オランダのフォーレンダムは、こぎれいで豊かな港町だ。犯罪や失業もほとんどなく、とうてい対立の温床には見えない。だが3月15日の同国総選挙では、3分の1の有権者が、反移民を掲げる極右政党「自由党」のヘルト・ウィルダース党首を支持するとみられている。
ウィルダース党首の高い人気は、西側の民主主義諸国が抱える現状に挑み、欧州連合(EU)を揺るがす「パラドックス」を浮き彫りにしている。経済が順調にもかかわらず、有権者は主流派に背を向け、反主流派的なポピュリズムに賛同しているのだ。
この傾向が特に顕著なのがオランダだ。オランダ経済は今年、ユーロ圏で最も好調になる見込みで、幸福度や物質的な満足を示すグローバル指標によれば、オランダ国民は常に最上位近くにランクされている。
オランダにおける反主流派感情は、「何よりもまず文化やアイデンティティに由来するもので、経済とはあまり関係がない」。そう語るのは、アムステルダム大学の政治学者としてEUにおける極右政党の台頭を研究するサラ・デランゲ氏だ。
こうした感情は、EU離脱を決めた英国民投票や、ドナルド・トランプ氏が勝利した米大統領選に見られた人々の不満と呼応するものだ。仮にウィルダース氏が権力獲得に至るほどの勝利を収めないとしても、オランダ総選挙は、ポピュリストによる政治的反動の次なる幕開けとなるだろう。
世論調査では、ウィルダース氏率いる自由党は改選前の2倍以上となる26議席にまで勢力が拡大すると予想されている。41議席から27議席への転落が見込まれるマルク・ルッテ首相の保守党に肩を並べる勢いだ。連立与党の労働党は、現在の38議席から14議席に転落するとみられている。
中道政党が自由党との連立を否定しているため、ウィルダース氏は結局のところ野党の立場を維持する可能性が高い。とはいえ、中道政党も移民制限に賛同するなか、ウィルダーズ氏は、すでに政界の主流を極右寄りに動かすことに成功していると言えるだろう。
長年にわたるリベラルな移民政策を巡る、都市部の親EU派政治エリートに対する怒りが、ウィルダーズ人気の源泉となっている。