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北朝鮮へ外交努力か先制攻撃か 試されるトランプ大統領の決断力

2017年3月9日(木)15時18分

3月8日、大統領選中から北朝鮮に厳しい姿勢で臨むと明言してきたトランプ米大統領は、今その決断力を試される状況に面している。写真はフロリダ州パームビーチ国際空港にエア・フォース・ワンから降り立つところの米大統領。3日撮影(2017年 ロイター/Jonathan Ernst)

大統領選中から北朝鮮に厳しい姿勢で臨むと明言してきたトランプ米大統領は、今その決断力を試される状況に面している。政権幹部は北朝鮮のミサイルや核の脅威に対抗する戦略見直しを早期にまとめるよう働き掛けを強めている。

北朝鮮による最近のミサイル発射やマレーシアで起きた金正男氏殺害事件を受け、情勢は緊急度を増し、米政府が安全保障上の重大課題に向き合う必要が高まった。

政権高官らによると、あらゆる選択肢が検討されている。北朝鮮を協議に引き戻すことを狙った制裁強化から、韓国への米核兵器の再配備、さらには北朝鮮のミサイル施設に対する先制攻撃までもが検討対象だという。

ただ、米国が先制攻撃に出た場合、地域戦争を引き起こす危険があり、日本や韓国、また両国に駐留する数万人の米軍に多数の犠牲が出る恐れがある。このため、米当局者は現在のところ、リスクが大きすぎると考えている。

しかし、米本土を攻撃できる能力を持つ大陸間弾道ミサイル(ICBM)の実験を北朝鮮が実施する場合、先制攻撃案も現実味を帯びるかもしれない。1月の就任直前、北朝鮮がICBMの発射実験に近付いているとした際、トランプ氏は「そのようなことは起きない」とツイートした。

今月中にも戦略見直し

当局者によると、対北朝鮮戦略の見直しは今月末までに完了する見込みだという。ただ、国家安全保障関連の課題に対するトランプ氏の対応ペースが遅いため、決定が遅れる可能性もある。

トランプ氏は詳細な外交政策を巡る協議に忍耐強く応じないことで知られるが、当局者によると、北朝鮮が対処すべき最も切迫した国際的課題だと忠告したオバマ前大統領に従っているようだという。

また当局は、北朝鮮への圧力を強めるように中国を説得する必要を強調しているが、ミサイル発射を受けたトランプ氏の最初の具体的な対応は、韓国に「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備を開始したことで、これが中国政府をいら立たせている。

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