フィリピンパブの研究者がホステスと恋愛したら......
いずれにしても、22歳の青年には不釣り合いな世界である。にもかかわらず、周囲からの誤解を受け入れたうえで著者はミカと交際し、ヒモのような立場にもなり、やがて友人、指導教官、自分の家族らとミカを積極的に引き合わせていく。
そして著者の母など、最初は抵抗を示していた人は、やがてミカの明るく素直な人柄に惹かれていくことになる。だから、その過程を目で追っていると、こちらまで温かい気分になってくる。
とはいえ、当然ながら平和なことばかりが続くわけではない。特筆すべきは、理不尽な要求を突きつけてきたミカのマネージャーと著者が、真正面からぶつかり合う場面だ。その部分の詳細を明かすと読む楽しみが減ってしまうので控えておくが、「殴られてすめばいいが、殺されることだってあるかも」という思いを抱きながらも後には引けなくなった著者の立ち回りは、間違いなく本書最大のクライマックスだ。
さて、紆余曲折を経た結果、ミカと著者はどうなったのだろうか? そのことについても、やはり明かすべきではないだろう。ぜひとも、最後まで疾走感が途絶えることのないそのストーリーを実際にお楽しみいただきたい。
[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は他に、「ライフハッカー[日本版]」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダヴィンチ」「THE 21」などにも寄稿。新刊『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)をはじめ、『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)など著作多数。